【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(29)企業目標に天井をつくらず
技研製作所の看板はもちろん、無振動・無騒音の杭(くい)打ち機「サイレントパイラー」と、その機能をフルに生かした数々の独創的な工法である。加えて、社長の北村精男(あきお)が挙げるのが「創業51年間で死亡事故ゼロ」の実績。背景には、経営哲学「環境整備」「人と機械の融合」がある。
「環境整備」とは、事故防止のための整理整頓の徹底だ。同社の事務所も工場も、その明るさ、定規で測ったような整然さに目を見張る。
また「人と機械の融合」は、機械を扱う企業として「道具や機械は人間の体の延長だ」という考え方だ。丁寧な作業の心がけと同時に「機械を設計、製造した人の機械への愛着を思い、機械への感謝の念を失うな」と、北村は言う。
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この北村の経営哲学には、約60年間におよぶ建設機械のエンジニアとしてのプライドが凝縮されている。
高校を卒業し就いた建設機械のオペレーターの仕事は昭和30年当時、高知の人々には「飛行機のパイロットと同じ」と映るほど花形の職業だったという。北村は、職場で出会った「実直で知識豊富」な“師匠”たちから多くのことを学んだ。その教えを胸に、独立後、サイレントパイラーをゼロから生み出し、ひとつひとつ改良を重ね、国内外に普及させていった。
サイレントパイラーの販売を開始したときは、価格の決定をめぐって、「売ってもうけようということは考えてなかった。どうしてもと望まれ、断腸の思いで『嫁に出す』ような気持ちだった。だから、高い価格設定とし、値引きの要請には絶対応じなかった」と語る。
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こうした経営哲学・方針は社員に浸透し、ときに社員の支えとなった。高知県外では初の営業所を大阪に設けた際、当時所長を務めた吉村元博は「会社の考え方を(取引相手に)理解してもらうことが第一でした。(北村からの)『安易に売るな』など、今日に通じる方針と助言のおかげで、情報の波に流されることもなく邁進(まいしん)できたことを想(おも)い出します」(技研三十年史)と記している。
「度重なる自然災害を契機として次世代型の強靱(きょうじん)なインフラを構築する責任は大きくなっている。(企業目標に)天井をつくらず、工法革命を進める知恵を生み出し続けていく」
プライドと経営哲学を胸に秘め、北村は技研製作所の目標を明言した。
=敬称略
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首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。
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