【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(30)工法革命へ新たな歩み始まる

 
技研製作所が高知県と取り組み始めた災害時緊急対応のイメージ図。破堤した河川堤防をインプラント工法でせき止める

 技研製作所は、連続して杭(くい)を打ち込んで造る「壁」に堤防・防波堤の働きをさせる「インプラント工法」の普及に邁進している。

 しかし、社長の北村精男(あきお)は「自然を克服することが目的ではない」という。北村が引き合いに出すのが、高知市の東に位置する香南市赤岡町にある生家の話だ。香宗(こうそう)川のほとりにあり、北村は今もここに住む。

 「昔は生活の中に自然があった。どこで水があふれるか分かっていたので、家をかさ上げするか、下流域の住民はいち早く避難するかすればよかった」

 戦後、各地で河川改修が進むにつれて、堤防“神話”が浸透し、自然と国民の意識が乖離(かいり)し始めた。北村が子供のころ遊んだ風景も一変した。

 「石垣ひとつひとつにカニがいた。ホタルもトンボもたくさんいた。川もきれいで、フナやドジョウやウナギもたくさんいた。それらがいなくなってしまった。現代人は大きな罪を犯したのだと思う」

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 安全なはずの堤防が、東日本大震災や近年の豪雨に対して機能を果たさなくなっている。北村は言う。

 「堤防は公共事業として建設されるから、当然国民は安全だと思ってしまう。ところが、ある日突然、家が流されてしまうといったことが続いている。堤防が従来の工法で機能を果たさなくなったのなら、工法を見直すべきだろう」

 平成27年の鬼(き)怒(ぬ)川(がわ)氾濫による茨城県常総市の水害を契機に、土木や地盤工学の専門家らは、杭の連続壁による堤防補強法を「ハイブリッド工法」と呼び、河川でも導入を検討すべきだという声をあげ始めたが、実態は遅々として進んでいない。

 「鬼怒川は破堤する場所が事前に想定されていて、その通りになった。破堤が想定された場所にインプラント工法を導入していれば被害は防げたはずだ」

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 業界団体「全国圧入協会」は高知県と提携し、災害時に被災した河川や海岸の施設復旧、浸水被害の早期解消などを目的とした防災協定を結んだ。今後も、圧入工法を通じた社会貢献を全国の自治体に広げていくという。

 北村、そして技研製作所の真骨頂は、無公害を実現した杭打ち機「サイレントパイラー」の開発にみられるように、「なければつくる」という強い意思だ。

 創業50周年の昨年、東証1部上場を果たした技研製作所。新たな50年、「工法革命」を推進する国土防災企業としての歩みが始まった。

=敬称略

(おわり)

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。