【スポーツbiz】さあ、FIFAワールドカップ・ロシア大会だ
6月の声を聞き、サッカーファンは腰が落ち着かない。現地時間の14日午後6時(日本時間15日午前0時)、モスクワでのロシア対サウジアラビア戦で「2018FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ・ロシア大会」の幕が開く。
6大会連続出場の日本代表はコロンビア、セネガル、ポーランドとのグループH。2位以内に入って、まずは決勝トーナメント進出を目指す。
初戦は21日午後9時からのコロンビア戦(サランスク)。FIFAランキング16位相手に、同60位の日本がどれだけ自分たちのプレーができるのか。
開幕2カ月前でのハリルホジッチ監督解任、西野朗監督就任という緊急事態に直面し、代表23人の選出は遅れた。平均年齢は過去最高28.3歳、経験豊かな選手たちの熟達した技と意思疎通に頼るしかない。
鈍い関連商品の動き
本番前の騒ぎはサッカー商戦にも影響、関連商品の売れ行きは鈍いという。代表選手が直前まで決まらず、名前入りユニホームの製作が遅れて売れ行きは低調だ。ビザ取得の煩わしさが手伝い、ロシアへの観戦ツアーもあまり伸びていない。
一方、大会組織委員会は、ロシア国内での経済波及効果を23年までに最大308億ドル(約3兆3855億円)に達すると試算、公表した。低迷するロシア経済の牽引(けんいん)役が期待される。
ワールドカップ(W杯)に限らず、大規模スポーツ競技大会では常に経済効果に期待がかかる。しかし、受け入れる態勢が整わなければ効果は薄い。
14年ソチ冬季オリンピックを開催したロシアが一番知っていよう。大会後、ソチをスポーツリゾート、コンベンションシティーとして売りだすはずが、閉会後のグルジア侵攻で世界の不興をかい、もくろみは外れた。このW杯で持ち直せるか。
ロシアはW杯に何を期待するのか。考えてみたい。
単純にいえば観戦客の訪問が増える。長期滞在客が落とす宿泊費、飲食代、公共交通機関の利用料金などは増加しよう。開催会場の11都市だけではなく、出場各国のキャンプ地周辺でも同様の効果が生まれる。
海外への露出、情報発信次第で、終了後はとくに観光業に好影響を及ぼすだろう。しかし、受け入れ側のインフラ整備が進まなければ絵に描いた餅。ソフト、ハード両面からの取り組みを進めないと、珍しさだけの旅では風船はしぼんでしまう。
大会マスコットや大会ロゴなどを使ったグッズは雰囲気を盛り上げ、財源ともなる。オオカミをモチーフにしたマスコットの「ザバビカ」はロシア語では「ゴールを決める」。
かつて東西冷戦時代の1980年モスクワ・オリンピック、熊の「ミーシャ」が閉会式で涙を流した演出が話題となった。アフガニスタン侵攻に抗議したアメリカ、日本など西側諸国が大会をボイコット。殺伐とした状況に流した涙だった。
ゴール決められるか
ロシアは国際政治の舞台で存在感を失ったままだ。大国復権を狙ったスポーツでは国ぐるみのドーピングが発覚、逆に倫理観が問われている。ザバビカはどんなゴールを決めるのか。
公共投資が進み、雇用は増えた。しかし、次の手が打てなければ一過性に終わる。
スポンサーは最高位の「FIFAパートナー」こそアディダス、コカ・コーラなど7社を数えるが、「ワールドカップパートナー」「リージョナルパートナー」など、肝心な国内スポンサーが伸びていない。
「グリーンベニュー」を唱えて、競技会場や関連施設から広告を排除するオリンピックとは異なる。サッカーW杯はスタジアム、ピットに看板広告があふれるのが常だ。200以上もの国・地域で試合が放送され、企業が広告効果を狙い高額契約を結ぶはずだが…。
FIFAには、15年に起きた幹部による汚職事件後初となる大会である。金権イメージを払拭したい。優勝賞金をブラジル大会より300万ドル上げて3800万ドルに。準優勝国には2800万ドルなど成績に応じて賞金を渡す。グループリーグ出場だけで800万ドルを支払い、総額6億9100万ドルに及ぶ。それがモチベーション確保では金権体質は変わらない。
競技と少し違う視点からロシアW杯を見れば、来年のラグビーW杯、20年東京オリンピック・パラリンピックに続く何かが見えてくる。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)
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