はれのひ元社長、詐欺容疑で逮捕 財務糸口に銀行融資金詐取で立件

 
米国から成田空港に到着した篠崎洋一郎容疑者=23日午後

 成人の日を前に営業を突然取りやめた振り袖の販売・レンタル業「はれのひ」元社長の篠崎洋一郎容疑者(55)が23日、詐欺容疑で逮捕された。

 篠崎洋一郎容疑者が設立したはれのひは、わずか数年の間に次々と新規出店した結果、資金繰りが悪化し、取引先への支払いは滞り、昨年秋には従業員の給料未払いも常態化していた。神奈川県警は成人式の騒動後、はれのひの支店があった福岡県警などと連携し、同社や銀行関係者らへの聴取などを通じて財務状況の精査を進め、銀行融資金をめぐる詐欺容疑での立件にこぎ着けた。

 今回の詐欺事件は、同社が虚偽の決算書類を作成していたことに加え、篠崎容疑者が経営状態や融資金の返済能力についても把握する立場にあったことが立件理由の一つだ。

 ある捜査関係者は「(篠崎容疑者が銀行を)『だますつもりはなかった』といっても、彼は経営者。『最初から故意で、お金を返せないのは分かっていた』ということを証明できるかがポイント」と指摘する。

 一方、新成人を巻き込んだ騒動については「だますという意識がないまま新成人相手に契約を取り続けていたなら、ただの債務不履行」とし、現段階では新成人に対する詐欺容疑での立件は見送る公算が大きいという。

 破産管財人によると、同社が抱える負債額は約10億8500万円。債権者は約2500人で、うち約2千人が同社で晴れ着を購入するなどした顧客だ。別の捜査関係者は「被害者の新成人は約2千人。被害弁済の見通しが全くない中、個別の事情聴取などをしていると長期化する上、篠崎容疑者が海外逃亡をはかる危険性も出てくる」とした。

 実際、篠崎容疑者は債務整理や着物の返還作業を手伝うことなく、3月から家族とともに観光ビザで米国に滞在。破産管財人の弁護士らの連絡にも応じなかった。神奈川県警はビザの期限切れで帰国するのを待ち、逮捕に踏み切った。