「プラスチックフリー」への挑戦 世界の潮流を牽引するオランダのスーパー
プラスチック汚染は年々「待ったなし」の緊張感を増している。
今年、UNEP(国連環境計画)は世界環境デーに合わせて『使い捨てプラスチックに関する報告書』を発表し、「現代における最も深刻な環境問題の一つ」であるプラスチック汚染の実態と各国の対策をまとめた。
中国が廃プラの輸入を禁止したのも、EUがストローなど10品目の規制を提案したのも記憶に新しい。日本政府は今年6月、来年大阪で開催されるG20サミット首脳会議に向けて、プラスチック汚染に関して世界規模で問題提起していく考えを示した。
▽世界のメディアも報道
オランダ国内に現在74店舗を展開する、オーガニック食品の最大手スーパーチェーン・エコプラザは、オンラインショップを含む全店舗で実に1370点(執筆時点)のプラスチックフリー商品を扱い、この潮流をリードしている。
特にこの春にイギリスの環境団体「ア・プラスチック・プラネット」やオランダの「プラスチック・スープ財団」と協同でアムステルダムにオープンした、世界初となる一切プラスチックを使用しないスーパーマーケット店舗「エコプラザ・ラボ」は大きな反響を呼び、ニューヨークタイムズやBBCなど、世界的メディアに数多く取り上げられた。
この店舗は予定されていた4月末でプロジェクトを終了したが、本社はそれを「長いプラスチックフリーの旅の単なる始まり」と位置づけている。
今回取材に応じてくれたエコプラザ・ラボプロジェクト責任者のスティーブン・アイザーマン氏は、「そもそもこのプロジェクトの目的は(プラスチック削減に関して)世間をインスパイアし、情報を伝えることでした。非常に多くの企業や消費者の注目を集めましたので、結果は大成功です」と語った。
▽こだわりの包装の真意とは
実際にオランダ南部にある常設店舗を訪れてみることにした。道すがら、頭の中には野菜が棚にむき出しで陳列され、量り売りの調味料や化粧品のガラスケースが並ぶ、なんというか昔の駄菓子屋と農家の軒先の融合のようなビジュアルが浮かぶ。
店内に一歩入って拍子抜け。地元産のオーガニック野菜やパンのコーナーは確かにむき出しで陳列されている(もっともこれは、オランダのスーパーでは普通である)が、他はいたって“普通”の包装をされた商品が整然と棚に並んでいる。
これは、「プラスチック削減のデメリットを被らずに買い物をしてもらえるよう、包装をしないのではなく、より環境にやさしい素材で包装することにした」(本社ゼネラルマネージャー、エリック・ダズ氏)結果である。
普通のプラスチックに見える透明の袋に入った商品も多く扱っているが、これらは生分解性材料でできている。微生物と酵素の働きによって最終的には水と二酸化炭素など自然界に無害な物質に分解される素材だ。手に取るとなんというか若干「パリパリ」した感触があるが、消費者の手に届くまでのプロセスに限っては特に強度や利用に問題がありそうではない。
環境のためにはそのほうがいいと分かってはいても、むき出しで売り場に並ぶ(そしてしばしば他の客が触りまくっている)食品に抵抗を感じることもある私だが、これなら問題なしだ。
▽価格は高めだが…
食品の他にボディケア用品も扱っており、自社ブランドの基礎化粧品「ボタニーク」は全製品においてマイクロプラスチックの完全排除に成功しているとの表示がある。
マイクロプラスチックは特に海洋汚染において問題視されている微小なプラスチック粒子のことで、エコプラザは自社HPで「単なる歯磨き粉にも少なくとも67種類入っている」とした上で、「最終的にはあなたのお皿の上に帰ってくるものです」と警鐘を鳴らしている。
なお、本題からそれるが、オーガニックの店に多くみられるように、醤油や味噌、蕎麦やシイタケなどの和食材も多く扱っているのがうれしい。最近和食レストランが立ち並ぶオランダにおいても、ヨーロッパ製の納豆が買える店はさすがにここだけである。
買い物客としてデメリットを挙げるとすれば、やはり一般的なスーパーより価格が高めということだろうか。もちろん商品にもよるが、他のチェーンスーパーで売っている大手メーカー製の食品よりも、平均して5割増し以上の印象を受けた。
ただこれは、他の店で売っているオーガニック製品と同程度なので、パッケージによる影響がどの程度なのかは気になる点だ。
▽卵の格付けは親鳥の運動量で決まる!
オランダ人は元々環境問題や社会貢献への意識が高い国民だ。例えば、スーパーで売っている鶏卵は、産地でもブランドでもなく、「自由に歩き回っている鶏の卵」から「鶏舎に住んでいる鶏の卵」まで、親鳥一羽当たりの生活スペースによって3段階に分かれている。
そして一番よく売り切れているのは、意外にも最も割高な「自由歩行卵」なのである。「ケチ」で有名な国民ではあるが、一人当たりの寄付に費やす平均年間金額は世界一であり、卵に関しても「1、2ユーロの差額で動物にも環境にもいい養鶏場を支援できるのなら、自由歩行卵を買おう」と考えるのだ。
当然、企業としての環境への貢献も消費者に重視される国において、ましてやもともとわざわざオーガニック食品を買いに来る消費者層に、プラスチック汚染に強く取り組む姿を印象付けることのブランディング効果だって、決して小さくはないだろう。
▽今後の課題
ただし課題はまだ残る。先述のアイザーマン氏は、「現在手元にある生分解性素材では、真空包装をしたり高温の製品を入れたりすることができません」と語る。また、企業がせっかく生分解性素材を利用しても、現在それが自然に還るような処理方法が行政サイドで確立されていないという指摘もある。
それに対して同氏は、「今回エコプラザ・ラボが大きな注目を集めたことで、多くの化学系企業が協力を申し出てくれましたので、これから一緒に取り組んでいきます」とコメントしている。
先述の限定店舗エコプラザ・ラボの店名通り、試行錯誤し実験しながらとにかく行動する姿勢を見せている感のある同社のプラスチックフリーへの取り組み。
今後も、どうしても排除不可能なプラスチック容器への課金(例えば、リユースのために店に返還すると返金される)や、輸送プロセスでのプラスチック利用の削減など、多様な方法でプラスチック削減に取り組んでいくという。(ステレンフェルト幸子/5時から作家塾(R))
《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。
関連記事