自然体に近づくアンドロイド 散歩ができる子供型、会話上手な女性型
人間そっくりのロボット「アンドロイド」の開発に取り組む大阪大の石黒浩教授らの研究チームがこのほど東京都内で新作を公開した。車輪で自由に移動できる子供型の「ibuki(イブキ)」や、会話ができる女性型の「ERICA(エリカ)」の改良版だ。人間とより深い関係性を築ける対話ロボットの開発につなげる狙いがあり、道案内や店舗での商品説明、就職面接などへの応用を目指す。
笑顔やジェスチャー
イブキは人間とともに移動し、さまざまな場所で経験を共有できる。10歳程度の子供の想定で、身長は120センチ、バッテリーを含む体重は約37キロ。子供型にすることで、人に衝突してけがをさせる危険性を減らし、心理的な威圧感も抑えた。
人間が歩くときに重心が8の字を描く様子を再現し、車輪でありながらまるで歩いているような躍動感を実現。笑顔を見せたり、手でジェスチャーをしたりすることで、より自然な感情表現を対話に加えることもできるという。
一方、改良版のエリカは人間が話す内容に応じて多様な相づちを打ったり、重要なキーワードを認識して聞き返すなど、自然な対話感を高めた。
エリカが就職の面接を行うデモンストレーションも披露され、志望動機や学生時代に頑張ったことなどを学生役の男性に質問。男性が、部活動で用具の管理や部員のスケジュールをマネジメントしたエピソードを話すと、「その経験を通して得られたものは何ですか」「スケジュールの管理についてもう少し詳しく話してください」などと、深く掘り下げる質問をし、まるで本物の面接のようなやり取りを交わした。
相手の心理状態把握
面接とは異なり、目的が明確でない初対面の人との世間話のデモも行われた。待合室で初めて会った人と話すという場面設定で、待ち時間が長いと人間が話すと、エリカは「そうですね。ちゃんと準備してほしいですよね」と答え、「こういう待ち時間、普段はどのようにつぶしますか」と話題を提供した。
エリカは恋愛小説を読むのが好きな設定で、人間役が本を読むのが好きだと答えると、目を見開いて喜びの表情を見せ、より積極的に話し出した。共通の話題を発見して会話が弾む様子が再現された。逆に、人間側があまり積極的に話をしたくない様子を示すと、次第に話をしなくなるなど、相手の振るまいに合わせて距離感を作る。マイクや動きを検知するセンサーなどを通じて情報を集めて心理状態を把握する仕組みだ。
石黒教授は「相手の状況に合わせて話すことができるようになってきた。語彙を増やしたり、間の取り方を研究するなどして、より自然な対話ができるロボットを実現したい」と、さらなる進化に意欲を示した。
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