【スポーツi.】まさに日本は「スポーツバブル」、相次ぐ不祥事…早く「先進国」に
□帝京大学准教授・川上祐司
今年5月に行われた日本ゴルフツアー選手権森ビルカップのプロアマ戦で片山晋呉選手が招待客に不愉快な思いをさせたとして罰金と厳重注意処分を受けた。森ビルカップは日本ゴルフツアー機構(JGTO)が主催する日本男子ゴルフツアーのメジャートーナメントの1つで賞金総額は1億5000万円を誇る。森ビルは冠スポンサーの位置付けで特別協賛として同大会をサポートする。この巨額の賞金も協賛金で充当されている。
その同社が日頃のご愛顧を込めた取引先へのホスピタリティーの場として開催するのがプロアマ戦であり、プロゴルフツアーでは恒例のイベントである。果たしてその目的とは何か。日本のプロゴルフトーナメント構造について筆者の旧職での経験を基に日本女子プロゴルフツアー(LPGAツアー)を事例に考えてみたい。
企業が主催者
2018年LPGAツアーは賞金総額37億2500万円(全38試合)と、6年連続で最高額を更新する。そのほとんどは企業の宣伝広告費からである。LPGAの小林浩美会長は「ツアーの価値をさらに向上できるように頑張っていきたい」とコメントした。
実は日本のプロゴルフツアーでは、LPGAやJGTO、JGA(日本ゴルフ協会)が主催する公式戦を除く全てのトーナメントで企業が主催者として大会を運営している。LPGAツアーの場合、主催企業はLPGAに決して安価ではない大会公認料を支払う。賞金を含む大会運営費は全て宣伝費または拡販費などで賄って大会を運営する。
もちろん、前日に開催されるプロアマ戦の費用も含まれるわけで、片山選手の取った態度は企業側からすれば問題である。週末の夕方に放映されるテレビ中継にもCM提供料を支払う。ライツホルダーの主催者がテレビ放映権を販売するのではなく、CM提供料を支払うというスポーツビジネスとしてはまれな商流が今も存在する。
スポンサーシップの目的は(1)セールス拡大(2)ブランド向上(3)ホスピタリティー提供(4)CSR実践-などが挙げられる。ゴルフツアーは主催企業が興行的に黒字化することは不可能である。
ゴルフトーナメントほど選手とファンの距離が近い大会はない。これまで敷居の高かった貴族のスポーツも大衆化へと発展して多くのファンが楽しみにしている。今から数年前の大会最終日。既に規定ホール数も終了し大会自体は成立している。傘をさしながら競技再開を待つファンを後目に選手たちはクラブハウスで携帯電話で天気予報を見ながら中止を促すかのようなコメントを大会本部に寄せた。競技再開に向けてひたむきにグリーン上の水をかき出す大会運営者側の姿はいまだに忘れられない。どちらが真のプロフェッショナルの姿だろうか。
バブル崩壊したら…
1993年開幕のJリーグに始まり、B、F、T、V、W、X…、わが国ではアルファベット頭文字のプロスポーツリーグが設立され続けている。これほど多くのプロリーグが独立して存在するのは日本だけではないか。2020年への便乗を漂うような、まさにスポーツバブルと言っても過言ではない。
だが、スポーツビジネスの大きな収入源である、チケット収入、スポンサーシップ収入、テレビ放映権、マーチャンダイジング収入がこれほどまで成立していない国も日本だけである。そして相次ぐスポーツ競技団体の不祥事。これではスポーツ先進国とはいえない。仮にスポーツバブルとして、その崩壊後の犠牲者が選手とファンでないことを祈るばかりである。
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【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭をとっている。著書に『メジャーリーグの現場に学ぶビジネス戦略-マーケティング、スポンサーシップ、ツーリズムへの展開』(晃洋書房)がある。53歳。大阪府出身。
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