今年最大のトホホ夫婦? 体操協会・塚原夫妻がやらかした「初期対応」の大失敗

 
日本体操協会の塚原光男副会長(左)と塚原千恵子女子強化本部長

【ニッポンの謝罪道】 誰かが告発をしたり怒った場合の正しい対応は「謝る」である。そして、「謝ったら負け。なんとかもみ消したい」と考え、謝罪を早い段階でせずに強弁を張ったらこれは初期対応のミス。結果的に後でいくら謝罪をしても、もう後の祭り。様々な面ですでに終わっている。

◆「全部ウソ!」で尾を引くことに

 最近のこの代表格が、体操の宮川紗江選手に対しパワハラを行ったとされる日本体操協会の塚原光男副会長と塚原千恵子女子強化本部長の夫妻だ。そして、信号無視・飲酒運転の末に自転車の女性をひき逃げし、それに歩行者の男性にも軽傷を負わせたタレントの吉澤ひとみ被告である。

 塚原副会長は宮川選手の告発の翌日、報道陣に対し「全部ウソ!」と何度も言い放った。あの映像を見た時、「うわっ、断言しちまった……。こりゃ、後でこの発言が尾を引く結果となるぞ……」と思ったがその懸念は大当たりに。夫妻は過ちを認め文書で謝罪をし、さらには宮川選手に直接謝罪をしたいと申し出るも拒否され、もはや今年最大のトホホ夫婦扱いになってしまった。

 本気で「私は悪くない。この怒ってるヤツの言い分はすべてフェイクである」と思っているのならば、最後まで反論を続け、場合によっては名誉棄損で訴えるところまでもっていくべきだ。そこまでの自信があり、相手が事実誤認をしているのであれば、怒っている人に謝る必要はないが、大抵の場合、怒っている人に分があるものである。

 吉澤被告ははねた後、15分後に警察に通報し自首。被害者を助けなかった理由については、自動車を停車させる場所がなかったため立ち去ったと説明したが、後に公開されたドライブレコーダーの映像だと場所は十分にあることが分かった。

◆なぜ第一声で謝罪しなかった

 結果的に塚原夫妻も吉澤も謝罪をするに至ったが、つくづく思うのが「なぜ、第一声で謝罪をしないのだ」ということだ。どちらにせよ、悪事は後にバレるものなのだから、傷口を浅くするためにも最初の段階で謝る方がいい。塚原副会長は翌日、大勢の報道陣の前で「本当に申し訳ないことをしました。宮川選手にお詫び申し上げたい」と後にした謝罪をあのタイミングですべきだった。

 吉澤の場合は、はねた直後に車を停め、すぐに被害者に謝罪すべきだった。

 人間は何らかの間違いを犯してしまった後や告発をされた後は、少しでも好意的な意見を入手しようとするし、ネガティブな意見には耳を傾けたくなくなるもの。あとは、自分のことを正当化できる材料を見つけにかかり、自己保身をまずは図ってしまう。

 これは多分あまり賢くない。すべての状況はネガティブに、場合によっては最悪の事態を考えておいた方がいいのである。その前提を基に行動をすれば、少しはマシになる。

 とにかくネットスラングで言うところの「謝ったら死ぬ病」の人が多過ぎる。そして、これらの人はもはや言い逃れができなくなるまで追い詰められたところでようやく謝罪に至る。

◆思い出される恩師の言葉

 中学1年生の時の担任の言葉でよく覚えているものがある。

 「キミ達は何かを注意されたり、怒られると毎回『でも…』から始める。これはダメだ。自分が正しい、というところから入っているのだから怒る人の気持ちを考えていない。正しいやり方は『ごめんなさい。でも…』だ。とにかく順番を変えなさい。まずは謝る。続いて言い訳というか釈明をする、という流れにしなさい」

 「潔く謝った」という言い方もあるように、即座に非を認め、全面的に自分の落ち度を謝罪できた場合、許されることも多い。後になって誰かから詮索されたり、内部からのタレ込みがあってバラされたりするより、自分からすべて言ってしまった方がラクだ。

 結局塚原夫妻の場合も、最初に頑なな態度を取ったからメディアにつきまとわれる結果になったし、何しろ「全部ウソ!」発言のインパクトが大き過ぎて余計な面白キャラと化し、メディアのおもちゃになった感は否めない。

 あれから何とか自らの正当性がないか、宮川選手の非を見つけようとしたのだろうが、「全部ウソ!」断言の後にそれはもはや効力を発揮しない。結局「全部ウソ!」はウソだったのだ。

 告発に至るほどのできごとや、目の前で発生した事故については自分以上に状況をよく知っている人間はいない。少しでもやましい部分があるのであれば、即謝罪をすべきである。他人の心情を変えることはできるが、発生してしまった事実を変えることはできないのだから。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は原則第4水曜日。

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