【近ごろ都に流行るもの】「進化形フリーズドライ食品」 カツカレーに親子丼…驚きの復元力
お湯をかけるだけですぐに温かな食事ができるフリーズドライ(凍結乾燥)食品。その進化がスゴイ。カツカレーや親子丼、水でもどるサラダなど、汁ものだけではない本格グルメが続々誕生している。時短はもとより、軽くて長期保存できる特性にも注目。豪雨、台風、地震…と自然災害が相次ぐなか、栄養価の高い非常食としても活躍の場を広げている。(重松明子、写真も)
茶色の四角い物体にお湯をかけ、箸でほぐすとアラ不思議。カツが現れた。ご飯に載せたらカツカレーの完成です!
スプーンで口に運ぶと、タマネギの甘さと生クリームのコクがまろやかなカレーに、コンガリした肉の歯ごたえが絡み合う…。フリーズドライの進化が堪能できるこの商品は、アマノフーズの「チキンカツカレー」(2食入り1200円)。
7月末から1万5千セット限定で販売され、JR横浜駅近くのアンテナショップでは「品切れ間近」、通販でも「今月中に完売しそう」という人気である。
「カツカレーを調理した後に、フリーズドライの加工を施します。お湯による再現が難しいカツは牛、豚、鶏の各部位で実験し、形状や食感がより良く復元できた国産鶏のささみ肉を選びました。工程の細部に工夫をこらしています」。アマノフーズを展開するアサヒグループ食品の中田あや担当課長は現場の苦労を代弁した。
同社では、「匠」と呼ばれる技術顧問の島村雅人さん(60)を中心に、驚きのメニューへの挑戦を続けている。チキンカツカレーは2年前、新技術・食品開発賞(主催・日本食糧新聞社)に輝いた「とんかつの玉子とじ」を応用進化させた自信作という。
東京店、福山店(広島県)に続いて一昨年オープンした横浜店は、54平方メートルに約100種のフリーズドライ食品が並び、イートインスペースも15席ある。お湯と器が用意され、1杯100円のみそ汁からパスタやリゾット、にゅうめん、シチュー、おしるこなどが手軽に食べられると好評だ。
多い日は約200人が来店し、女性客が多いが男性客も3割。海外出張のおみやげ、単身家族への仕送り、コンペの景品など、ギフト需要も高まっている。
常連の横浜市内の専業主婦(49)は、「ここのカレーが大好き。友達から親子丼もおいしいと聞いて、今日はそちらも買った。家族で週末の朝食に食べていますが、家事が休めて助かります」
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フリーズドライ食品市場はみそ汁を除いたスープだけでも年間192億円(今年予測)に達し、9年前の1.4倍超に増えている(富士経済調べ)。
素材を凍結させて真空状態で水分を抜く技術は、血液成分の保存など医療分野から発祥した。アマノフーズは昭和43年に真空凍結乾燥機を導入して食品開発を進め、46年発売の世界初のカップ麺「日清カップヌードル」の具材(えび、ねぎ、肉)に採用された。57年にはブロック形フリーズドライみそ汁を完成させている。
「(熱風乾燥と違って)ビタミンなどの栄養素が壊れにくく、非常食に向いている」と指摘するのは、防災教育NPO法人プラス・アーツ東京事務所の小倉丈佳所長だ。「パンやおにぎりに偏りがちな災害時の食事におすすめ。油分の多い食材はフリーズドライに向かないため、カロリーはおおむね低めです。主食と上手に組み合わせてほしい」
アマノフーズの非常食箱「食べながら備える ローリングストックBOX」の開発にも協力。平時から「食べる→補充」を習慣化することで、賞味期限を保ちつつ備える仕組み。大型台風と北海道の地震後に売り上げが急増しているそうだ。
この秋、水でもどる生姜(しょうが)や大根おろしも商品化された。旬のサンマを焼いたとき、大根をおろす手間が省ける便利物だ。開発の背景には高齢化や単身世帯の増加がある。
「フリーズ」「ドライ」の言葉の響きとは対照的。敬老の日の心温まるプレゼントにもなりそうだ。
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