半日足らずの周知、運行再開時もトラブル 「計画運休」で新たな基準を模索

 
台風24号をめぐる経緯

 台風接近を受けて、鉄道各社が事前に電車の運転を取りやめる「計画運休」が広がり、10日には初の検証会議が国土交通省で開かれた。9月末に上陸した台風24号ではJR東日本が首都圏で初めて実施、周知の遅れや運行再開時の混乱などもあったが一定の成果を挙げた。専門家は「社会全体で新たな基準を考えるべきだ」と指摘する。(橋本昌宗)

                   ◇

 台風24号は9月30日夜に和歌山県に上陸、列島を縦断した。9月上旬の台風21号でも計画運休したJR東海やJR西日本は、前日から新幹線や在来線の運休見通しを次々と公表。30日正午過ぎにJR東も午後8時から首都圏の在来線全線で計画運休すると発表、商店や飲食店は次々と閉店した。

 総務省消防庁によると、台風の死者は21号が14人(10月2日現在)、24号が3人(同5日現在)。広範囲で計画運休が行われた24号では人的被害が最小限に抑えられ、対策が奏功したとみられる。民間調査会社「サーベイリサーチセンター」(大阪)が台風21号でJR西などが行った計画運休について大阪市在住の303人に調査したところ、72・9%が「混乱や危険を避ける上で必要」と好意的な回答を寄せた。

 一方、初となった首都圏の全面計画運休では混乱も生じた。JR東は施設の安全確認に手間取り、翌1日の始発から運休や遅れが発生。32もの駅で朝から入場が制限された。周知期間が半日足らずだったため計画運休に気付かず、帰宅できなくなった人もいた。

 工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)は「前日夜か当日早朝までに周知すべきだった。運行再開時のトラブルもある程度想定できたはずで、それを見越した情報提供をすれば混乱を回避できた」と、JR東に見通しの甘さがあったと指摘する。

 台風や豪雨の際、日本ではどの段階で活動を中止するかは鉄道に限らず事業者が主体的に判断するが、経済活動や生活に与える影響が大きいため、難しい判断を迫られる。

 香港では台風の際、香港天文台が「シグナル」と呼ばれる数字で1、3、8、9、10の5区分の警報を発令する。最低の1が「警戒準備段階」で、3の「強風警告段階」では幼稚園が休園、船便も欠航になる。8は「暴風シグナル」などと呼ばれ、学校は休校、商店や会社などが軒並み自主休業して公共交通機関もストップ。9、10では都市機能がほぼ停止する。

 高木教授は「計画運休しても利用者が納得するのはどんな場合なのか、社会全体による議論が不可欠だ」と話した。