【eco最前線を聞く】CFP活用し合理的にCO2削減 安藤ハザマ
□安藤ハザマ技術研究所材料グループ・鈴木好幸氏
安藤ハザマは建設事業で二酸化炭素(CO2)排出量の削減を推進するため、カーボンフットプリント(CFP)とそれに基づくカーボン・オフセットの活用に力を入れる。CFPによるCO2排出量の見える化を図ることにより、発注者と設計者、施工者が連携して排出量の削減に取り組めるようにするのが目的だ。技術本部技術研究所建築研究第二部材料グループの鈴木好幸氏は「一連の戦略を通じ、より低炭素な材料や工法の開発に役立てていきたい」と強調する。
公的な評価制度
--建築物のCO2排出量の現状は
「設計・建設から運用、解体に至るライフサイクル全体のCO2排出量は、国内全排出量の約4割を占める。そのうちの多くを占める運用時のCO2はZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の開発が猛烈な勢いで進んでいるため、急激に減っていくとみている。今後は新築・改修段階でのさらなる削減が重要となるのは間違いない」
--CFPを活用した理由は
「当社では1次エネルギー使用量を基にした運用段階のCO2排出量の評価に加え、資材調達や廃棄、リサイクルを含めた建築物そのものに関わる全ライフサイクル型の評価も実施している。ただ、運用時以外のCO2排出量の評価は算定プロセスが煩雑。透明性を確保した評価を証明するのが難しいとされている。このため公的な評価制度として認められているCFP制度について、建築物に活用できる枠組みを確立した」
--具体的な事例は
「JR貨物が発注し当社が設計施工した東京貨物ターミナル駅事務所新築工事(東京都品川区)に適用した。CFPの手法により削減効果を確認した上で、建設資材の輸送手段をトラック輸送からCO2排出量が最も少ないとされる鉄道貨物輸送へ変更。さらに、残存する輸送プロセスのCO2排出量をCFP認証により見える化し、排出量分をカーボン・オフセットによりゼロとした」
設計段階から選択可能に
--CFPを適用することによる効果は
「合理化のために提案している内容がコストや工期などの面では有効でも、CO2排出量の観点では過大となっていないかなどを事前に把握できる。これは大きな武器になる。設計段階であらかじめ、CO2が減るような材料・方法を選べたりすることもCFPの評価を使えば、十分可能というところまで実証で確認している。もっとたくさんのデータを蓄積できれば、低炭素な材料や工法の開発につながるだろう」
--カーボン・オフセットの意義は
社会的課題への取り組みを評価して投資資金を振り向ける「ESG投資」が注目されている。こうした動きに対応するには、サプライチェーン全体のCO2を把握した上で削減の道筋をどのような形で進めていくのかについて、投資家に対して的確に回答する必要がある。それにはCFPとオフセットの活用が有効に働く。今回の実証結果を広くアピールしたい」(伊藤俊祐)
◇
【プロフィル】鈴木好幸
すずき・よしゆき 室蘭工大院修了。2010年ハザマ(現安藤ハザマ)入社。技術研究所でコンクリートや環境関連の開発に従事。33歳。北海道出身。
◇
【用語解説】カーボンフットプリント(CFP)
製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスの総排出量を、CO2に換算した数値で表示する仕組み。ISO(国際標準化機構)に基づく環境ラベルに関連した制度として、一定のルールに基づき運用されている。
【用語解説】カーボン・オフセット
自らの努力では削減しきれないCO2などの温室効果ガス排出量を、他の場所での削減・吸収により埋め合わせ、社会全体として温室効果ガスを減らす取り組み。
【用語解説】ZEB
高断熱化や自然エネルギーの利用などによって、できる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電などでエネルギーをつくることにより、年間で消費する建築物のエネルギー収支「ゼロ」を目指した建築物。
関連記事