車の人混み突入 地域で自衛「柵」 警察対応に限界、費用など課題も

 
年明け直後、車が暴走した竹下通り。車進入防止のポール設置が検討されている=東京都渋谷区(緒方優子撮影)

 東京・原宿の竹下通りで軽乗用車が1日未明に暴走し、通行人8人をはねた事件は、殺人未遂容疑で逮捕され鑑定留置中の日下部(くさかべ)和博容疑者(21)の事件直前の動きなどから、場当たり的に犯行場所を選んだ可能性が強まってきた。竹下通りでは費用面などから一度は見送った車進入防止のポール設置を再び検討。車突入の犯罪が国内外で後を絶たない情勢に自治体や商店街などで自衛策を講じる動きが広がっており、専門家も「警察だけでは限界がある」として地域の取り組みを促している。

 世界中のあめやグミなどを量り売りで買え、若者に人気のある竹下通りの菓子店。事件から20日以上が過ぎても、車が衝突して破損した正面のガラス部分には緩衝材がビニールテープで固定されたままだ。

 「街は少しずつ元通りになっている。でも、ここを通ると事件が頭をよぎる」。現場近くの飲食店で働く女性(26)は話す。

 場当たり的犯行

 日下部容疑者の当初の供述などによると、「死刑制度を許している国民が許せない」として無差別に人を襲うことを決め、当初は明治神宮の初詣客を狙い、高圧洗浄機で灯油をまいて火をつける“火炎放射”を計画。ところが洗浄機にうまく灯油を入れられず、交通規制で明治神宮に近づけなかったことなどから、別の場所で車を暴走させる計画に変更したとみられる。

 警視庁が周辺の防犯カメラの映像を解析した結果、日下部容疑者の車が事件直前、竹下通りの前を行ったり来たりしており、捜査関係者は「進入しやすい道を探して走行する中で、たまたま竹下通りを選んだ可能性がある」と指摘する。

 竹下通りでは数年前から歩行者天国時の車進入防止策として、自動で上下する複数の金属製ポールをJR原宿駅側の入口に設置する計画が浮上。商店会が道路を管理する渋谷区と協議したが、約2千万円という高額な設置費用などがハードルとなり見送られてきた。

 事件は一方通行の出口である明治通り側から車が入り込むという想定外の問題も突きつけた。商店会広報担当者は「安心、安全が一番。やれることはやっていきたいというのが商店会の思い」としており、ポール設置へ見積もりや先行事例の情報収集を進めている。

 国内外で相次ぐ

 車を突入させ通行人らを無差別に狙う犯罪、テロは国内外で相次いできた。現実的な脅威として認知され対策が講じられている。

 平成29年11月に商店街で車が暴走する事件があった松山市では昨年6月、商店街と市道の境界3カ所に、手動昇降式のポール10本を設置。地元の要望で市が約860万円で導入したといい、担当者は「早期の対応が必要と判断した」。17年にアーケード街でトラックが暴走する事件があった仙台市も、4カ年で同様のポール226本を設置した。

 東京都足立区は今年度内にも、270万円をかけて公共施設に花壇型の車両進入防止装置を設置する。担当者は「訪れる人の安全を守りながら、威圧感がなく景観に馴染むものにしたい」。

 まだ危機感薄く

 一方、車両進入防止のポールを販売する「帝金」(大阪)の奥田浩也常務取締役は「海外に比べ、国内ではまだ危機感が薄い印象がある」と話す。同社販売の英国製のポールは大型トラックの衝突にも耐えうるとし、2012(平成24)年ロンドン五輪・パラリンピックの主要会場などで採用されたが、国内での施工は数例という。

 国際テロに詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長は「人がある程度集まる場所はどこでも狙われる可能性がある」と指摘。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、対策強化の重要性が増す中、「警察の警備だけでは限界がある。費用面の課題はあるが、著名な商店街がある自治体などは当事者意識を高め、警備員や車止めの配置などで対応しないといけない」と話した。