【Science View】宇宙初期物質の小さなしずくを創成 理化学研究所

 
≪シロイヌナズナ根端の皮層細胞層の液胞形成機構≫シロイヌナズナの根端組織の皮層細胞層ではまず、ゴルジ体に由来する多胞体(MVB)同士が融合して小さい液胞(SV)が形成され、さらに小さい液胞が融合を繰り返すことで大きな液胞(LV)が形成される。

 ■宇宙初期物質の小さなしずくを創成

 □理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 理研BNL研究センター 実験研究グループ グループリーダー・秋葉康之

 原子核を構成する陽子と中性子は、クォークとグルーオンという素粒子で構成されている。これらの粒子は全て、自然界に働く4つの基本的な力の一つ「強い相互作用」によって強く結び付いているが、約2兆度という超高温下では、クォークやグルーオンがばらばらになった「クォーク・グルーオン・プラズマ」と呼ばれる超高密度のプラズマ状態が生成される。この状態は、約138億年前に起きたビッグバン直後の数十万分の1秒の間、全宇宙を満たしていたと考えられている。これまでの研究により、金原子核(陽子数79、中性子数118)のように大きな原子核同士を非常に高いエネルギーで衝突させると、原子核中の陽子や中性子が融合し、クォーク・グルーオン・プラズマが生成されることが分かっている。今回、理研が参加する国際共同研究グループは、米国ブルックヘブン国立研究所の「RHIC衝突型加速器」を用いて、陽子と金原子核、重陽子(陽子数2)と金原子核、ヘリウム3(陽子数3)と金原子核をそれぞれ衝突させる実験を行った。その結果、全ての実験で「楕円フロー」、「三角フロー」と呼ばれるハドロン(クォークとグルーオンからなる複合粒子)の集団運動パターンが得られた。これにより、小さな原子核と大きな原子核の衝突においてもクォーク・グルーオン・プラズマが生成されることが強く示された。

 本研究成果は、強い相互作用や宇宙初期の状態の理解につながると期待できる。

【プロフィル】秋葉康之

 あきば・やすゆき 東京大学理学部卒。東京大学原子核研究所助手、高エネルギー加速器研究機構助手を経て、2008年から現職。高エネルギー原子核衝突実験による、クォーク・グルーオン・プラズマの研究を進めている。16年よりPHENIX実験国際共同研究の代表者。

 ■コメント=クォーク・グルーオン・プラズマの性質を解明し、「強い相互作用」の理解を目指す。

 ■植物根端細胞の液胞形成機構を解明

 □理化学研究所 環境資源科学研究センター 技術基盤部門 質量分析・顕微鏡解析ユニット 上級技師・豊岡公徳

 植物の液胞は、植物細胞の容積の90%以上を占め、根や葉などの生長と発生に重要な役割を果たす細胞内小器官である。液胞が形成される過程として、(1)ゴルジ体から由来する多胞体(MVB)が融合することで大きな液胞が形成される、(2)小胞体から由来する隔離膜が拡張して大きな液胞になるという2つの異なるモデルが提案されていた。

 今回、理研と香港中文大学との国際共同研究グループは、モデル植物であるアブラナ科のシロイヌナズナを用いて、その根端組織の細胞群における液胞の形成過程を広域かつ3次元で捉えることを試みた。ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)単位の分解能で3次元撮影できる透過電子顕微鏡を用いた「連続切片電子線トモグラフィー法」と、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた「アレイトモグラフィー法」を組み合わせ、細胞全体の3次元再構築を行った。その結果、まず直径100~400nmの多胞体同士が融合して、直径400~1000nmの小さい液胞(SV)が形成され、それらがさらに融合を繰り返すことで直径2000nm以上の大きな液胞(LV)が形成されることを明らかにした。

 本研究成果は、植物の生長と発生に関わる液胞形成機構の長年の謎を明らかにするもので、今後、液胞の形成機構を人為的に制御できれば、植物の生長の向上や有用物質を蓄積させるなど液胞の機能の向上につながると期待できる。

【プロフィル】豊岡公徳

 とよおか・きみのり 2002年、理化学研究所に着任後、研究員、上級研究員などを経て、現在に至る。電子顕微鏡など大型顕微鏡機器の管理運営・技術支援・技術開発、それらを用いた基礎研究・共同研究を遂行。博士(理学)。

 ■コメント=電子顕微鏡技術を駆使し、細胞内の未知な超微細構造物の同定を目指す。

 ■企業向け理研イブニングセミナー開催

 理化学研究所は、研究成果と研究活動を産業界に伝え、連携に結び付けることを狙いに、企業関係者を対象としたイブニングセミナーを、東京と神戸で月に1回開催している。東京会場で開催するシリーズ企画のセミナーでは、社会課題に基づく具体的なテーマを設定し、そのテーマに沿った講演を企業のファシリテーターと協力して企画・開催。各シリーズは3回で構成され、各回理研の研究者が異なる観点から講演する。先着40人の事前申込制。

 ◇3月6日(水) 「都市をまるごとデジタル化!『総合防災シミュレーション』を目指して」

 講師・大谷英之(計算科学研究センター 総合防災・減災研究チーム)

 場所・健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス三宮拠点「iKAfE(あいかふぇ)」(神戸市中央区雲井通5-3-1 サンパル7階)

 ◇4月17日(水)「バイオベースポリマーの生分解メカニズムの解明に向けて」

 講師・阿部 英喜(環境資源科学研究センター バイオプラスチック研究チーム)

 場所・理研東京連絡事務所(東京都中央区日本橋1-4-1 日本橋一丁目三井ビルディング15階)

 開催スケジュールは、理研 企業共創部HP、また理研HP内「イベント/シンポジウム」ページで公開中。

 ◇申し込みなど詳細は、理研 企業共創部ホームページ(http://c3d.riken.jp)へ。

 ◇問い合わせ 理化学研究所 イノベーション事業本部 企業共創部

 電話048・467・4346

 E-mail:evening-seminar@riken.jp