富裕層の「ついで観光」特需に期待 関西ワールドマスターズゲームズ

 

 4年に1度の生涯スポーツの国際大会「ワールドマスターズゲームズ(WMG)」の2021年5月の日本開催まで、今年5月であと2年となる。近畿を中心に2府8県にまたがり競技会場が置かれるため、観光を中心に経済的な波及効果に期待が高まる。なにしろ、これまでの大会参加者への分析では、半数以上が年収1千万円を超える富裕層だからだ。ただ、アジアで開催されたことのなかった大会だけに、日本での認知度は1割程度と低い。受け入れ準備はまだ本格化しておらず、早期の詳細な競技日程の公表を求める声も上がっている。(牛島要平)

 競技日程は来月にも

 おおむね30歳以上であれば誰でも参加が可能なWMG。スポーツ愛好家の世界最大規模の競技イベントとして欧米では広く知られる。

 日本でのWMGは、2021年5月14~30日の17日間の日程で開催される。1985年のカナダ・トロントでの第1回大会から10回目の節目にあたり、関西はアジアで初開催の地になる。

 「競技日程を早く知りたい。まだ決まらないの?」

 ボートのスポーツクラブ「瀬田漕艇倶楽部」(大津市)に所属する下村繁彦さん(63)には、姉妹提携しているオーストラリア・シドニーのクラブなどから、関西大会について問い合わせが相次いでいる。「京都や大阪に観光するスケジュールを組みたい」というのだ。

 下村さんも、前回の17年にニュージーランドで開かれたWMGオークランド大会では、同国の他の地域まで足を延ばしてボートを楽しんだ。「WMGは競技が半分、観光半分で2~3週間の滞在を考えるケースが多い」という。

 関西大会の各競技の開催場所は決まっており、たとえばボート競技は滋賀県立琵琶湖漕艇場(同市)で行われる。

 ところが、どの競技が期間中のいつ行われるかが最終決定しておらず、選手は競技と観光を含めた全体の日程を組むのが難しい。

 選手登録が開始される来年2月に向けて1年を切る中、「早めの情報提供が必要だ」と下村さんは気をもんでいる。

 詳細な競技日程の公表は来月中旬になる見通し。WMG関西大会の組織委員会は、11月をめどに観光と宿泊についての特設ホームページを開設する予定だ。

 海外から2万人参加

 関西大会には、海外から約2万人の参加者が見込まれる。2020年の東京五輪の選手数上限の約2倍の規模に相当する。

 大阪経済大の相原正道教授(スポーツビジネス)は、過去のWMGが1都市で開催されてきたのに対して、関西大会が近畿2府4県に加えて、岡山、鳥取、徳島、福井県でもあり、広域開催になることに注目する。

 軟式野球(滋賀県守山市、東近江市)、ソフトテニス(京都府福知山市)、綱引き(奈良県葛城市)、グラウンド・ゴルフ(鳥取県湯梨浜町)など9種目が今回初めて開催される。

 相原氏は「これまで外国人に知られていなかった場所が一躍脚光を浴び、ホットスポットになる可能性がある。SNS(会員制交流サイト)で情報が拡散し、複数の競技会場を移動する選手も多いのではないか」と話す。

 野外競技のオリエンテーリングの会場となる兵庫県北部に位置する香美(かみ)町。同町は「課題は英語」と考え、イラスト入りの指さし会話帳を宿泊施設などに配布する予定だ。WiFiや、現金を使わないキャッシュレス決済の設備導入も進めている。2月には外国人への対応をテーマにセミナーを開催し、宿泊業者らが参加した。町教委は「WMGをきっかけに外国人に来てもらいやすい町にしたい」と話す。

 組織委は、外国人選手らの広域的な移動には、JR西日本が発行する外国人向け乗り放題パスを活用。近距離では、関西経済連合会などが出している訪日外国人向けIC乗車券「関西ワンパス」(KANSAI ONE PASS)とシャトルバスの利用を想定する。関西大会にあわせて、各府県に1カ所ずつの「サテライト・ビレッジ(仮称)」を設けて、選手、住民が集まるイベントも検討中だ。

 組織委がオークランド大会の会場で約4千人に「関西大会に期待することは」と聞いたところ(複数回答可)、「観光」が79.45%、「食」が56.32%、「おもてなし」が46.05%を占めた。

 関西大会にかかわる企業や自治体では、外国人客の増加への期待は大きい。

 近畿でも知名度2割

 関西大会では、35競技59種目を実施する。第1回から9回までの大会参加者の平均年齢は49歳。WMGガイドラインによると、半数以上の参加者で、世帯年収が10万ドル(約1100万円)を超え、選手には富裕層が多いといわれる。平均滞在日数は15.8日に及ぶことから、観光需要も大きい。

 組織委は、海外からの2万人に加えて、国内から3万人の選手参加を目指す。5万人規模は過去最多で、実現すれば、選手の家族や関係者を合わせて計16万人が関西を訪れ、宿泊や飲食などによる経済効果は1461億円になると試算する。

 選手エントリーは2020年2月から1年間、インターネットで受け付ける予定。参加費用は未定だが、過去の大会では2万円台。語学などのボランティアも募り、2020年の東京五輪・パラリンピックでの経験者にも協力を呼びかけ、約6万人を集める計画だ。

 しかし、肝心のWMGに対する一般市民の認知度は高いとはいいがたい。

 今年1月に組織委が行った調査では、WMGの関西での開催を「知っている」と答えた人は全国で11.1%と1割程度。近畿2府4県でも21.3%にとどまった。

 大会の醍醐味は、選手同士や地元住民の交流により、スポーツを通じた国際親善がはかれることだ。

 オークランド大会の陸上競技で金メダルを獲得し、参加者から祝福を受けた曽野政男さん(65)=滋賀県栗東市=も「交流はWMGの一番の肝」と話す。

 国内での機運をどう盛り上げられるかが、関西大会での課題となっている。

 神戸大大学院の長ヶ原誠教授(スポーツ振興論)は「地域や職場、学校の同窓会などでチームを組み、一緒に出ようと計画すれば、参加したくなる人も多いのではないか。企業が有給休暇を取りやすくするなど、職場の理解と支援も求められる」と話す。