「原発ゼロ」が目前に迫り、日本国内の電力不足が深刻化してきた。政府は火力発電の増強で穴埋めを図るが、燃料コスト増加は企業や家庭向けの電気料金を引き上げ、経済活動の足を引っ張る。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーも安定供給面で不安が残り、電力危機が日本企業の海外流出に拍車をかけ、産業「空洞化」を加速させる心配が強まっている。
資源エネルギー庁幹部は「原発なしでは日本の経済活動が大きく落ち込む」と、電力不足を警戒する。
昨年3月の東京電力福島第1原発事故以降、定期検査に入った原発の再稼働は進まず、最後の稼働原発である北海道電力泊3号機も5月初めまでに定期検査に入る。東日本大震災前、総発電量の3割を供給していた原発の全てが失われる影響は小さくない。
全原発を火力発電で補えば、原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入にかかる費用が年間3兆円増え、「それだけの国富が海外に流出する」(経済産業省幹部)。イランがホルムズ海峡の閉鎖に踏み切れば、深刻さが更に増すのは明らかだ。