【特許ウォーズ~チーム山中の奮闘】(1)
グローバル化が進み、大学や企業は今、世界中で特許を取得する必要に迫られている。ただ、思わぬ難題に突き当たるケースも少なくない。京都大学iPS細胞研究所を舞台に、海外での知財戦略の課題を探ってみた。
「なぜ、米国では特許審査にこれほど時間がかかるのか。遅すぎる」
山中伸弥教授(49)が所長を務める「京都大学iPS細胞研究所」(京都市左京区)には、焦りといらだちが交錯していた。平成22年から23年初夏にかけてのことだ。
山中教授が発明したヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製技術は、平成20年9月に日本で最初の特許が成立。その後、1~2年で南アフリカやロシアなどでも同様の特許が相次ぎ成立していった。
しかし、他国と同じ時期に出願したものの、特許が成立しない国があった。医療先進国の米国だ。米国の医薬品市場は約27兆3千億円(2010年実績)と日本の3倍で、山中教授らのライバルとなる企業は無数に存在する。