毎年、国などへの報告書類の提出が義務づけられているにもかかわらず、提出しない宗教法人が増加している。多くが休眠法人とみられるが、実態調査や整理・統合は進んでいない。税制面で優遇される宗教法人が脱税の隠れみのとして悪用される例も後を絶たず、売買を仲介するブローカーも暗躍。国税当局も監視を強めている。
代表権購入で「寄付」
「建物なし、信者なし」「譲渡価格は応相談」…。
インターネットのサイトでは多くの宗教法人が「売り」に出されている。
あるブローカーによると、代表権のみの売買は最低で数百万円。宗教法人の設立は審査が厳しいため「作るより買う方が手っ取り早い」と考える人が多いという。販売先のその後の利用方法は「知ったこっちゃない」と気色ばんだ。別の業者関係者は「売買が法に抵触する可能性があることは知っているが、企業からの需要は多い。こちらもいくばくかの仲介料はもらっている」などと話した。
そんな「売られた」宗教法人が悪用された事件が、摘発された。
「手をかざして気を送るだけで病気が治る」とのうたい文句で、各地でセミナーを開いていた福岡県の企画会社「アースハート」前社長らが3月、法人税法違反罪で福岡地検に追起訴された。舞台装置として使われたのが、静岡県内の宗教法人だった。