オフはパーティーで料理を振る舞うという佐々木譲さん。得意料理はパエリア、ローストビーフなど【拡大】
直木賞受賞作『廃墟に乞う』や長編小説『警官の血』、北海道警察の警察官を主人公とする「道警シリーズ」などの警察小説が人気の佐々木譲氏。2002年に第21回新田次郎文学賞を受賞した『武揚伝』をはじめとする歴史小説にもファンが多い。精力的に執筆活動を続ける佐々木氏のオンとオフについて訪ねた。
--『廃墟に乞う』が生まれた背景は
「過去に担当した事件で心に傷を負った、北海道警察の休職中の刑事が事件の真相を追うという作品で、表題作を含む数編の短編については現実に起こった事件を参考にした。警察小説を書くようになってから、つながりができた関係者たちから聞いた話をモデルにし、設定を変えて書いた作品もある。発想の基になっているのは雑談が多い。取材のような形で話をするとしらけてしまうので、相手が語った体験談をさりげなく聞き、頭の中でストーリーが“発酵”していくのを待って執筆した。この作品で直木賞を受賞できたのも、私が北海道出身だという縁があったからだと思っている」
--作品に描いてきたものは
「警察小説が多くなっているが、技術系の人物を描くことも執筆テーマの一つ。『武揚伝』では、軍人ではなく技術官僚としての榎本武揚の半生を描いた。戦国時代の石積み職人を主人公にした『天下城』、その続編の『獅子の城塞』という作品もある。『疾駆する夢』では国産自動車を作りたいという夢を抱き、自動車会社を興した起業家を主人公に、日本の自動車産業史を書いた。私は、不器用でも芯が一本通っている男が好きで、小説の素材は違っても、主人公のタイプはほぼ同じ。現場で真剣かつ誠実に生きている人間が、格好良く、美しく見えるストーリーを描きたい」