人類の特徴として大きな脳を持ち、道具を作り、複雑な認識ができることが強調されている。しかし、運動能力をみると、強さ、器用さ、速さのどれを見ても他の動物に(親類筋に当たるアフリカ大型霊長類を含めて)見劣りがする。人類は、弱く、遅く、不器用な生物である。典型的な現代人よりかなり軽いチンパンジーでさえ、より大きな力を出せ、より速く走り、そして器用に移動する。素手でチンパンジーと戦ったら、ヒトは一人も勝ち残れないだろう。
しかし、専門家らは、ヒトは強さや速さでは他の動物に負けるが、持久力、特に有酸素運動に関しては、驚くべき能力を持っているという。この能力は、有酸素代謝を必要とする5キロメートル以上の持久走で特に顕著だ。
ヒトは、特別な訓練をしないアマチュアでも秒速5メートルのスピードを維持できる。人間と同じくらいの体重を持つ犬は、理想的な条件の下でも秒速7.8メートルの全速力を10~15分しか維持できない、特に暑いときには。したがって、大型の犬は4、5キロメートルでは、人間に走り勝てるが、それ以上の距離では、逆に人間が犬よりも速い。馬は10キロメートル走ではヒトより速い。しかし、長距離にわたる繰り返し走では、速度は秒速5~8メートルになり、1日に20キロメートル程度以上は走れない。それ以上走ると、回復不可能な損傷を筋肉骨格系に与えてしまう。