□産経新聞論説委員・榊原智
核兵器・弾道ミサイル戦力の保有を諦めない北朝鮮をめぐり、緊迫した情勢が続いている。隣国である日本は北の核・ミサイルに備えなければならないが、それには意外な形の脅威も含まれる。
その一つかもしれないのが、核兵器を高さ30キロメートルから数百キロメートルもの高高度(高層大気圏)で爆発させておこす「電磁パルス(EMP)攻撃」だ。
原爆や水爆について、日本人は1945年の広島、長崎の惨禍を連想する。広島では上空600メートル、長崎は上空500メートル付近で原爆が爆発した。核爆発で生じるとてつもない熱線、爆風が大きな被害をもたらす。放射線による被害も伴う。
一方、EMP攻撃は核爆発の現場があまりに高高度であるため、熱線、爆風、放射線で直接死傷する人は出ない。
にもかかわらず、高高度核爆発によるEMP攻撃にさらされた国家の文明社会は崩壊する恐れがある。日本なら、何千万人もが餓死に追い込まれるかもしれない。
核爆発で強力なEMPが生じる。現場が高高度なら、下方の極めて広い領域にわたって、対策を施していない電子機器・電子回路に過剰な電流が流れる。電子機器・回路は破壊されたり、誤作動したりする。