遺伝子注入で心筋梗塞改善 慶応大、マウス体内で

 心筋梗塞になったマウスの心臓に3種類の遺伝子を注入し、血液を全身に送り出すポンプ機能を回復させることに成功したと、慶応大の家田真樹専任講師らが21日、米科学誌セル・ステム・セルに発表した。今後、遺伝的に人間により近いサルでも試験し、5年後には人間の患者を対象にした研究に入りたいとしている。

 心筋梗塞などの病気で拍動する心筋が失われると、線維芽細胞という動かない細胞に置き換わる。マウスの実験で、3種類の遺伝子を組み込んだウイルスを梗塞の起きた部分に注射すると、1カ月で線維芽細胞の約5%が心筋に変化。ポンプ機能も、人間でいえば移植が必要な深刻な状態を脱するまでに改善した。

 治療には、細胞内の遺伝子を傷つけない新開発のウイルスを利用。目的外の細胞が変化することもなかったため、一定の安全性が見込めることを確認した。今後は、体内で炎症を起こしにくいようウイルスを改良する。