【第27回地球環境大賞】特別寄稿 COP23を振り返って(3-1)


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  • 各国パビリオンは活気に満ち、さながら万博会場のようだったが…
  • ドイツのボンで開かれた国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(AP)

 □21世紀政策研究所 研究副主幹・竹内純子

 ■「パリ協定」の運用ルール 対立点が顕在化

 私が国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に初めて参加したのは、2010年末にメキシコのカンクンで行われたCOP16であった。デンマーク政府の対応のまずさもあり、大失敗と評されたCOP15によって国連気候変動交渉プロセスそのものへの信頼感が揺らぐ中、それを見事に軌道修正し「カンクン合意」の採択という成果をみせたが、会議が終わったのは2週目の土曜日の早朝だったと記憶している。

 それ以降のCOPでも正式な会期である2週目の金曜日で交渉が終わったことはなく、延長を見越して日曜日に現地を出発するスケジュールを組むのが常である。

 ◆指針の文書270ページ

 しかし、今年は会期が延長されるほど議論が白熱することは当初から想定されておらず、日本からの参加者の多くも金曜夜あるいは土曜日には帰国する便を予約していた。予想を裏切って、結局、2017年も土曜の早朝まで持ち越してやっと閉幕したが、COP23は想定通り具体的な成果には乏しかった。パリ協定のルールブック(実施指針)に関する270ページ弱の文書を作成したとはいえ、各国の主張をてんこ盛りにしたこの文書を今後収斂させることが容易ではないのは明らかである。

 パリ協定を実際に運用するにあたっては、詳細ルールあるいはガイドラインを必要とする。しかしそうした細部の作り込みの段階に入れば、対立点が顕在化・明確化する。

 ◆各国がそれぞれの主張

 パリ協定は2020年以降の国際的枠組みであり、何も2017年に成果を出す必要はないとなれば、交渉モードにはならず、各国がそれぞれの主張を展開するに任せることとなるのは当然だろう。パリ協定は、項目に応じて丁寧に先進国・途上国に対する拘束力の強さの違いを書き分けることで成立した。その構造を尊重し、新興国に相応の責任を求める先進国と、先進国と途上国の二分論の世界に戻ろうとする新興国、先進国・新興国の早急な温暖化対策とともにその支援を強く求める温暖化に脆弱な途上国など、いくつかの交渉グループに分かれてかみ合わない議論が続けられた。

 論点ごとにその対立点をいくつか紹介すれば、各国のNDC(自国が決定する貢献:Nationally Determined Contributionの略)は温室効果ガス削減(緩和)が中心であるべきとする先進国に対し、中国を含めた途上国諸国は、途上国に対する支援も含めて定量的に評価すべきだと主張している。先進国に対して、途上国支援の定量的目標や具体的政策措置について情報を提出するよう求め、緩和と同様に厳格にレビューを受けるべきだとする。

 緩和を中心とすべきだという点では一致していても、先進国も一枚岩ではなく、欧州連合(EU)は長期見通しを示すことを強く主張している。将来の排出水準を提示すべきだ、あるいは、現在のNDCと長期戦略との関係性を明らかにすべきだという主張は、パリ協定が掲げる長期目標との関係では一定の説得力を持つが、ほとんどの先進国が2030年の目標達成がおぼつかない現状では、やぶへびに終わる可能性が高いだろう。