【専欄】2018年の中国の動き 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 2018年の中国はいったいどんな1年となるのだろうか。重要な出来事の一つは、3月の新しい代表による全国人民代表大会(国会に相当)の開催である。昨年秋の共産党大会で決まった新しい指導部人事を受けて、続投する李克強首相が率いる新内閣が選出され、党内序列7位の韓正が筆頭副首相に就任する見込みである。

 今年は改革開放40周年という節目の年でもある。共産党の公式見解では、改革開放の起点は1978年末に開催された党中央委員会総会で、2008年の年末には30周年記念大会が開かれ、当時の党総書記、胡錦濤が演説し、改革開放を継続し、中華民族の偉大な復興を実現しようと呼びかけた。

 それにならって、今年の年末には40周年記念大会が開かれ、習近平が演説し、中国の特色ある社会主義の新時代の到来を強調し、共産党の指導下での社会主義現代化強国の実現を訴えるだろう。

 改革開放へと政策転換した1978年の10年前、つまり、今からちょうど半世紀前の1968年、中国では毛沢東が起こした文化大革命が3年目を迎えていた。この年、毛沢東は文革を推進するために自ら結成を呼びかけた造反組織の紅衛兵を、自ら弾圧、壊滅した。紅衛兵が毛沢東の手のひらから飛び出しつつあったからだ。

 権力、権威を強化している習近平を毛沢東になぞらえる、あるいは習近平は毛沢東になろうとしているといった論調が、先の党大会以降目立つが、習近平と毛沢東は全く異なるタイプの指導者である。習近平はルールと制度にのっとって権力と権威を強化しているが、少なくとも晩年の毛沢東はルールや制度などお構いなしだった。

 毛沢東は文革前夜、党内ナンバー2の劉少奇に向かって、「おれが小指1本動かせば、おまえなど打倒できる」と語ったというが、習近平が李克強に向かってそうした言葉を吐くことはありえないだろう。

 毛沢東は自ら大衆組織の結成を呼びかけ、その大衆組織が思惑通りに動かなくなると、それを自ら弾圧した。習近平にはそうした芸当はできないだろう。

 毛沢東が半世紀前に紅衛兵を弾圧して以降、中国の歴代指導者は党の指導からはみ出す大衆の自発的運動を認めず、敏感に反応して芽のうちに摘み取ろうとしてきた。私たちは今も、それを目にしているのである。(敬称略)