昭和天皇が採集した深海生物が新種と判明 ヒトデの仲間、東大などが分析 国内での新種発見は106年ぶり

新種のトゲツルボソテヅルモヅル。内臓が詰まった丸い中央部は直径約5センチ(岡西政典・東京大特任助教提供)
新種のトゲツルボソテヅルモヅル。内臓が詰まった丸い中央部は直径約5センチ(岡西政典・東京大特任助教提供)【拡大】

 昭和天皇が採集した深海にすむ生物が新種だったことが、東京大と国立科学博物館の共同研究で分かった。テヅルモヅル類というヒトデの仲間で、新種の発見は44年ぶり。専門誌に9日、論文が掲載された。

 新種と分かったのは、昭和天皇が昭和5~10年と25~33年に相模湾で採集した7個体を含む国内の11個体。同博物館に保管されていた標本を分析した結果、いずれも体表に微小なトゲを持つなどの特徴から同一の新種と判明した。

 テヅルモヅル類は腕が分岐しており、腕を広げると網を海中に投げているように見えるのが特徴という。国内での新種発見は106年ぶりで「トゲツルボソテヅルモヅル」と命名された。

 昭和天皇は深海などに生息するヒドロ虫類というクラゲの仲間の研究が専門で、調査船などで生物を採集していたという。

 チームの岡西政典・東大特任助教は「多くの研究者は目的のものだけ取ってほかは捨ててしまうが、昭和天皇は非常に多くの生き物を採集し、ご自身で選別して保存されていた。研究に対する情熱がうかがえる」と話している。