iPS心筋利用を正式承認 世界初の臨床研究、大阪大

 人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した「心筋シート」を重症心不全患者の心臓に移植する大阪大チームの世界初の臨床研究計画を、学内の「特定認定再生医療等委員会」が9日、正式に承認した。

 委員会は2月末、患者への説明をより丁寧にするように、説明文章の一部を修正することを条件に大筋で承認していた。今回、委員長が文章の改善を確認し、正式に「適切」と判断した。

 臨床研究は澤芳樹教授(心臓血管外科)のチームが計画。厚生労働省に実施申請し、認められれば春から夏にも開始する。

 iPS細胞を心筋細胞に変化させてシート状(直径数センチ、厚さ約0・1ミリ)にし、虚血性心筋症の患者3人の心臓にはり付けて、安全性や効果を確かめる。iPS細胞は、京都大の山中伸弥教授らが備蓄を進める、拒絶反応が起きにくいものを使用する。

 チームは既にiPS細胞を使わない手法として、患者の太ももの筋肉細胞から作製した心筋シートを開発しているが、種類が異なる筋肉のため、重症患者では効果が見込めなかった。今回の臨床研究では、移植した心筋細胞が心臓の一部となって働くことで、より高い効果が期待される。