サッカーW杯、招致合戦の闇 FIFA汚職、根絶表明も疑念の声

ロシアのサンクトペテルブルクでサッカーW杯ロシア大会まで100日を表示するボード=6日(AP)
ロシアのサンクトペテルブルクでサッカーW杯ロシア大会まで100日を表示するボード=6日(AP)【拡大】

 サッカーのワールドカップ(W杯)よりも人気があるスポーツイベントは存在しない。2014年には地球の人口のほぼ半数に相当する32億人余りが1カ月にわたってブラジルで開催された大会の放送を視聴した。しかし、各国の代表チームがピッチ上で勝敗を競うずっと以前から国同士の競争は始まっている。国際サッカー連盟(FIFA)に数十億ドルに上る放映権料とスポンサー料をもたらすこの大会を開催する栄誉を得るための招致合戦である。

 ◆収賄疑い幹部逮捕

 この競争が災いの種となり得る。過去の大会に付きまとってきた汚職のスキャンダルが次の2つの大会も揺るがしている。ロシア、そして特にカタールだ。FIFAをめぐる腐敗が美しいゲームに拭い難い汚点を残してしまうのだろうか。

 この3年間はFIFAにとって試練の時期だった。長くトップに君臨してきたゼップ・ブラッター前会長がサッカー界における6年間の活動停止処分を受け、5人の最高幹部が米国における汚職関連の容疑について有罪を認め、副会長は収賄容疑でスペイン警察に逮捕された。

 それでもW杯開催国となったロシア(18年)とカタール(22年)は、招致をめぐる不正疑惑に関するFIFAの調査をクリアし、次回大会は6月14日にモスクワで滞りなく開幕する運びとなった。

 この汚職スキャンダルが拡大したのは15年だった。チューリヒの高級ホテルに踏み込んだスイス警察の強制捜査によって複数のFIFA幹部が逮捕され、彼らを含む幹部および関係者が米司法省によって数億ドルに上る金銭授受など収賄の罪で起訴された。

 米司法当局による捜査は20件を超える有罪判決につながった。この捜査を大きく進展させたのは有罪判決を受けた一人である米国人の故チャック・ブレイザー元理事の内部告発によって暴露された情報だった。

 ブラッター氏の後任としてFIFA会長に就任したジャンニ・インファンティーノ氏は信頼回復を誓ったものの、多数の汚職捜査はさらに継続され、その中には、06年W杯の開催地をドイツに決定したことに関するFIFA独自の調査や、ロシアとカタールの選出に対するフランス当局の調査も含まれていた。FIFAは今、資金難に苦しんでいるかもしれない。

 このスキャンダルの発覚後の2年間、FIFAは欧州からも米国からも新しい大口スポンサーを獲得できておらず、カタールと(ワールドカップ開催の熱心な志願者である)中国からしかオフィシャルパートナーの契約を取り付けていない。それに加えて、FIFAが負担する法的な費用もかさむ一方だ。

 ◆開催の恩恵わずか

 1930年のW杯の初開催以来、開催地をめぐる争いはこの大会の悩みの種となってきた。最初の開催地としてウルグアイが選出されたが、欧州からは4チームのみが参加しただけだった。ウルグアイとアルゼンチンは38年の大会をボイコットした。欧州が2回連続して開催地になったからというのがその理由だった。

 そこでFIFAは試験的にローテーションシステムを導入した。現在では、過去2大会で開催地とならなかった大陸だけから立候補を受け付ける方式になっている。最近の実績からみると、W杯の開催に金銭的な恩恵は、あるとしてもわずかであることが判明している。南アフリカ共和国はアフリカ初開催となった2010年大会のためにスタジアム建設とインフラストラクチャー整備に投じた費用の10分の1しか回収できなかった。

 最近のW杯開催国はFIFA理事会の24人のメンバーによる無記名投票によって選出されている。ブレイザー元理事は南アフリカの選出に絡んで自分自身と他の委員会メンバーが賄賂を受け取ったと証言した。26年大会については、FIFAの200を超える全加盟国が20年5月の投票で勝者を選ぶことになる見通しだ。2つの地域が立候補しており、一つはモロッコで、もう一つは米国、カナダ、およびメキシコの共同開催だ。

 ブラッター前会長によると、FIFAは大会を計画的に「新しい土地」で開催することでサッカー人気を広め、さまざまな国に自国文化を紹介する機会を与えていると話していた。これに対して批判的な意見の持ち主は、ブラジルのような途上国にとってW杯の開催は単に財政難を招くだけであり、施設の建設に何十億ドルも支出するよりも同じ資金をもっと別の形で投じた方が有益であろうと主張する。不正行為を助長する投票システムによって選出プロセスは茶番と化しているとの指摘もある。

 ◆ファンの信頼失う

 FIFAは問題を根絶したいと表明しており、W杯の開催地選定プロセスだけでなく組織のコーポレートガバナンス(統治)も改革してきたとも述べている。だが、懐疑派はそうした対策は十分というには程遠く、FIFAは依然として厳正な調査や透明性の実現に抵抗していると語る。さらに、長年にわたってこのシステムの当事者だった理事たちに適切な改革が実施できるのかどうかに疑問を呈するとともに、FIFAの1国1票の投票システムこそ小国に不釣り合いな支配権を与えて不正行為の温床を作り出していると強調する。

 また、ブラッター氏の会長辞任とカタール選出の舞台裏の調査を強く求めて圧力を加えたのはFIFA自体ではなく、1回のW杯に各スポンサー当たり約16億ドルを投じている大手企業だったと説明している。

 17年に実施された50カ国2万5000人のサッカーファンを対象にした意識調査では、98%がFIFAの腐敗を懸念しており、半数以上がこの組織に対する信頼を失っていることが示された。(ブルームバーグ James Ludden)