統計解析研究チームチームリーダー鎌谷洋一郎
統計解析研究チームチームリーダー鎌谷洋一郎【拡大】

  • ビームライン研究開発グループビームライン開発チーム基礎科学特別研究員井上伊知郎

 ■脳卒中発症に関わる22の新しい遺伝的変異を同定

 ●理化学研究所生命医科学研究センター

 □統計解析研究チーム チームリーダー・鎌谷洋一郎

 脳卒中は、大きく虚血性(脳梗塞)と出血性(脳出血、くも膜下出血)に分けられ、脳梗塞はさらにアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞などの亜型に分類される。しかし、発症の分子レベルのメカニズムはよく分かっていない。

 今回、理研を含む国際共同研究グループは、欧州系、南北アメリカ系、アジア系、アフリカ系、オーストラリア系の集団に、バイオバンク・ジャパンと久山町研究(福岡県)が収集した日本人集団を加えた約52万人(患者6万7162人、対照者45万4450人)の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。その結果、32の脳卒中に影響する遺伝的変異(座位)を同定し、そのうち22の新規座位には3つの亜型に関連する6座位も含まれていた。また、32座位には心房細動、虚血性心疾患、静脈塞栓症、血管危険因子である高血圧や高コレステロール血症に関連する遺伝子も含まれていたことから、これらの血管系疾患や危険因子が、部分的に同じ遺伝子を経由して発症メカニズムに寄与していることが分かった。また、脳卒中関連遺伝子群と既存の治療薬の標的遺伝子とを照合するゲノム創薬解析の結果、これらの遺伝子群は急性期治療薬や脳梗塞の予防治療薬と、特に強い結びつきを持つことが分かった。

 本成果は、今後のオーダーメード医療の実現につながる礎を築くものである。同定した薬剤ターゲット候補は今後、直接的な治療につながると期待できる。

 ■プロフィル

 かまたに・よういちろう 千葉大学医学部卒、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程終了、博士(生命科学)。フランス・ヒト遺伝的多型研究センター(CEPH)上級研究員を経て2015年4月より現職、17年より京都大学大学院医学研究科准教授を兼任。

 ■コメント=今後はゲノム解析の成果をもとに、患者さんに役立つ成果への橋渡しへと貢献していきたい。

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 ■X線ハーモニックセパレーター

 ●理化学研究所 放射光科学研究センター XFEL研究開発部門

 □ビームライン研究開発グループ ビームライン開発チーム 基礎科学特別研究員・井上伊知郎

 1895年のX線発見以来、より明るいX線を求めてさまざまな光源が開発されてきた。大型放射光施設「SPring-8」などの現在の放射光X線光源では、広い波長範囲のX線が混ざって発生する。そのため、分光器によって実験に用いる波長のX線のみを抽出する必要がある。一方、X線自由電子レーザーや次世代放射光X線光源では、ある波長とその近傍の波長のX線のみが強く放射される。この特定波長のX線を分光器による光の単色化なしに抽出できると、分光器を使う場合と比較して約100倍の強度のX線ビームを実験に用いることが可能になる。

 今回、理研を中心とした共同研究チームは、「ハーモニックセパレーター」という光学技術を開発し、分光器なしに特定波長のX線を取り出すことに成功した。ハーモニックセパレーターでは、まず全反射ミラーによって抽出波長よりも短波長のX線を取り除く。さらにX線ビームをプリズムに通した後にスリットによって長波長のX線も除去することで、目的のX線を抽出する。この新しい光学技術によって、研究チームはX線自由電子レーザー「SACLA」から放射されたX線ビームから波長約0.124nm、約0.062nm、約0.041nmの光をそれぞれ単独に抽出した。それぞれのX線ビームは、分光器を使ってX線を取り出した場合と比較して、約100倍の強度を持っている。今後、開発した光学技術をX線自由電子レーザーや次世代放射光と組み合わせることで、X線計測の飛躍的なハイスループット化が期待できる。

 ■プロフィル

 いのうえ・いちろう 2011年 東京大学工学部物理工学科卒業。2016年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、博士(科学)。2016年4月から現職。

 ■コメント=新しい光学技術と光源開発を通じて、X線科学の発展に貢献したい。

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 ■企業向け理研イブニングセミナー開催

 理研は、研究成果と研究活動を産業界に伝えることを狙いに、企業関係者を対象としたイブニングセミナーを開催している。セミナーは先着40人の事前申し込み制。開催スケジュールは理研HP内「イベント/シンポジウム」ページで公開している。5月の開催概要は以下の通り。

 ◇5月23日(水)「超高感度での液体内の生体分子・病原性分子の定量化 ~1分子レベル蛍光分光光度計、および1分子レベルプロテオーム解析技術のご紹介~」

 講師・谷口雄一(生命機能科学研究センター)

 場所・理研東京連絡事務所(東京都中央区)

 ◇申し込み 開催1週間前までに、会社名、氏名、メールアドレス、電話番号、希望する日を記載の上、件名を『理研イブニングセミナー参加申込』としてevening-seminar@riken.jpへ申し込み

 ◇問い合わせ 理化学研究所 科技ハブ産連本部 産業連携部 産業連携推進課 E-mail:evening-seminar@riken.jp