タイ プラユット首相、続投への布石着々 民政移管の行方懸念

タイ東北部ウボンラチャタニ県で、学生らの前で演説するプラユット首相(中央)=7月23日(共同)
タイ東北部ウボンラチャタニ県で、学生らの前で演説するプラユット首相(中央)=7月23日(共同)【拡大】

 タイ軍事政権を率いるプラユット首相が、来年実施予定の総選挙後も首相を続投する意欲を示している。最大のライバル、タクシン元首相派を切り崩そうと同派の支持基盤へ地方行脚を展開し着々と布石を打つ。しかし、2014年のクーデター以降、政治活動を制限されている国民からは「首相の特権を利用した行為だ」と反発の声も上がる。民政移管の行方が懸念される。

批判を一蹴

 「この地域を愛しているから来た」。7月下旬、プラユット氏がタクシン派の牙城の一つ、東北部ウボンラチャタニ県を訪れて演説すると、集まった数十人の学生らが歓声で応じた。

 地元男性のブンソンさんは「貧しい人を助ける政策を実行したタクシン氏が恋しい」としながらも、国外亡命中のタクシン氏が帰国できる可能性は低いとみる。演説が好印象だったと言い、「プラユット氏にチャンスを与えてもよいかもしれない」と話した。

 クーデター以降禁止されていた政党による政治活動は9月に一部が解禁されたが、選挙活動は依然禁じられたままだ。

 そんななか、プラユット氏は「移動閣議」と称し、これまでに閣僚らと10県以上を訪問した。選挙を意識してか、最近は実施のペースを上げている。バンコクの銀行員、タンヤポーンさんは「他の政党は何もできないのに不公平」と批判する。

 しかしプラユット氏は「政府の仕事が地方でうまくいっているか確認しているだけだ」と批判を一蹴。9月13日には首相府で日本の人気アイドルグループ、AKB48のメンバーと面会し、笑顔で写真撮影に応じるなど、クーデターで実権を握ったこわもての印象払拭も図った。

地方はタクシン派

 9月上旬の世論調査では、次期首相にふさわしい人物としてプラユット氏が首位に。反タクシン派の民主党党首のアピシット元首相が2位につけたが、首相当時のような存在感はない。

 タクシン氏は帰国実現が見通せず、求心力が低下しつつあるものの、地方の貧しい農民を中心に人気は根強い。タクシン氏と同じく国外に逃れた妹のインラック前首相は、フェイスブックなどにたびたびメッセージを投稿し、健在ぶりをアピールしている。

 軍政側は多数派工作を狙い、各政党の元議員らを親軍政の政党に引き抜いているともされる。外交筋は「総選挙後も軍部が実権を握り続ける可能性はある」と指摘し、民主的な政権が発足するかは不透明との見方を示した。(ウボンラチャタニ 共同)

                   

【用語解説】タイの政治対立

 2001年のタクシン氏の首相就任を機に、タイでは農村部の貧困層が支持するタクシン派と、軍や財閥などの既得権益層や都市部の中間層との間で国を二分する対立が続いてきた。タクシン氏は06年のクーデターで失脚。軍は選挙で圧勝したタクシン派政権を14年にもクーデターで転覆させ、4年以上実権を握っている。汚職で有罪となったタクシン氏は国外で亡命生活を送りながら、次期総選挙で政権奪回を狙う。(バンコク 共同)