【Science View】中性子過剰なスズ同位体の巨大共鳴観測に成功

笹野匡紀氏
笹野匡紀氏【拡大】

  • 桃沢幸秀氏

 □理化学研究所仁科加速器科学研究センター スピン・アイソスピン研究室 専任研究員・笹野匡紀

 ■中性子過剰なスズ同位体の巨大共鳴観測に成功

 1935年に湯川秀樹博士によって理論的に提案された後、1947年に発見された「パイ中間子」は、原子核内の陽子と中性子の間に働く相互作用を理解する上で最も重要な中間子である。このパイ中間子が引き起こす「パイ中間子凝縮」という相転移現象が、1973年にA・B・ミグダルによって予言された。この現象は通常の原子核ではまだ観測されていないが、地球から遠く離れた「中性子星」では起きている可能性があると考えられている。

 今回、理研を中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」において生成された中性子過剰な二重魔法数「スズ-132(132Sn)原子核」ビームを液体水素標的に照射し、引き起こされた荷電交換(p,n)反応をWINDS中性子検出器とSAMURAI磁気スペクトロメーターを用いて測定することで、パイ中間子凝縮の性質を反映する「ガモフ・テラー巨大共鳴」と呼ばれる巨大共鳴現象の観測に世界で初めて成功した。得られたスペクトルと理論計算の比較から、パイ中間子凝縮が太陽質量の1.4倍より重い中性子星の中にある通常の原子核密度の2倍以上の密度を持つ環境で起こっている可能性が高いという結論が得られた。

 本研究成果により、今後、パイ中間子凝縮が起こる条件が明らかになり、中性子星の構造や急速冷却現象の解明が進むと期待できる。

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【プロフィル】笹野匡紀

 ささの・まさき 2008年3月、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了、博士(理学)。ミシガン州立大学リサーチアソシエイト、理化学研究所研究員を経て、2018年4月より現職。原子核中のπ中間子場の働きが生み出す不思議に魅せられて研究を行っている。

 ■コメント=日本が誇るRIビームファクトリーを使って、世界の物理学研究をリードしていきたい。

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 □理化学研究所生命医科学研究センター 基盤技術開発研究チーム チームリーダー・桃沢幸秀

 ■乳がんの「ゲノム医療」に貢献

 乳がんは、日本人女性で最も患者数の多いがんであり、そのうち5~10%の患者は一つの「病的バリアント(個人間での1カ所のゲノム配列の違い)」が原因になると推定されている。乳がんでは、BRCA1、BRCA2など11個の原因遺伝子が知られている。遺伝子検査により、乳がん患者が病的バリアントを持つことが分かれば、より適切な治療が可能になる。しかし、病的バリアントは人種によって大きく異なるため、日本人独自のデータベース構築が必要とされていた。

 今回、理研を中心とする国際共同研究グループは11の原因遺伝子について、バイオバンク・ジャパンにより収集された日本人の乳がん患者群7051人および対照群1万1241人のDNA(世界最大規模)を、独自に開発したゲノム解析手法を用いて解析した。その結果、244個の病的バリアントを同定するとともに、日本人に多い病的バリアント、遺伝子ごとの乳がんのリスク、病的バリアントを持つ人の臨床的特徴などを明らかにした。これらの解析結果については、病的バリアントデータベースを構築し、そのサマリー情報は国内外の公的データベースにも登録、活用される予定である。

 今後、これらの情報は、日本人の乳がんにおいて、患者一人一人にあった「ゲノム医療」に貢献すると期待される。

                  

【プロフィル】桃沢幸秀

 ももざわ・ゆきひで 2007年東京大学大学院農学生命科学研究科修了、博士(獣医学)。ベルギー国リエージュ大学博士研究員、理化学研究所研究員などを経て、2015年から現職。また、2018年から横浜市立大学生命医科学研究科の客員教授も兼任。

 ■コメント=大腸がんや膵がんなど他のがんも同様に解析し、ゲノム医療に貢献したいと思います。

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 ■理化学研究所神戸地区が一般公開を開催

 理化学研究所の神戸地区(生命機能科学研究センター、計算科学研究センター、健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム)は、11月23日(金・祝)に一般公開を開催する。研究現場の公開や施設の見学ツアー、科学の不思議がわかる体験型イベントを実施するほか、最先端の研究を紹介する講演会も開く。スーパーコンピュータ「京」は、今回が最後の一般公開となり、後継機であるポスト「京」の試作機も展示する。また、理研の周辺にある他の施設(大学、研究機関、企業)の公開も同時に行われ、高校生を対象とした講演会とトークセッション「サイエンスアゴラ in KOBE」も甲南大学ポートアイランドキャンパスレクチャーホールで開催される。入場無料。

 ◇日時 11月23日(金・祝)10:00~16:30(入場は16:15)まで

 ◇場所

  神戸地区東エリア、西エリア(神戸市中央区港島南町6-7-1、同6-7-3、同2-2-3、最寄駅・ポートライナー「医療センター」駅)

  神戸地区南エリア(神戸市中央区港島南町7-1-26、最寄駅・ポートライナー「京コンピュータ前」駅)

 ◇詳細は特設ホームページ参照 http://www.kobe.riken.jp/openhouse/18/

 ◇問い合わせ 理化学研究所神戸事業所 (電)078・306・0111(代表)