宇宙の謎に迫れ 日本に期待かかる素粒子研究施設「ILC」 誘致判断が年末期限 (1/3ページ)

日立製作所が開発に協力したILC向けクライオモジュール(高エネルギー加速器研究機構提供)
日立製作所が開発に協力したILC向けクライオモジュール(高エネルギー加速器研究機構提供)【拡大】

  • 三菱重工業の超電導加速空洞(同社提供)

 「ビッグバン」を再現し、未知の素粒子を探ることで宇宙誕生の謎に迫る国際研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」を日本に誘致するかどうかを政府が判断する期限が年末に迫っている。産業界では、専門技能と人材の継承や長期的な波及技術開発の鍵になるプロジェクトとして期待が高まっている。

 企業関与で高レベル

 リニアコライダーは、全長20キロメートルの直線の空洞の中で電気や磁気によって光速近くまで加速した電子と陽電子を正面衝突させる巨大加速器。衝突によって発生する素粒子を分析する。素粒子は物質を構成する最小単位だ。

 日本への誘致を望む声が世界の研究者らの間で高まっている背景には、日本の素粒子物理学研究が世界で最高水準にあるほか、海外での加速器開発が研究所主導であるのに対し日本では初期から企業が積極的に協力してきた経緯がある。

 1949年の湯川秀樹氏をはじめとして素粒子物理学の基礎研究分野での日本出身のノーベル物理学賞受賞者は11人に上り、世界に約300ある研究用加速器のうち48を日本が占める。加速器関連の技術を持つ企業は、三菱重工業や日立製作所、三菱電機、東芝、IHIなど全国で約5000社に及ぶ。

 ILC計画については8月から学術会議が審議中で、政府はその結果を踏まえて年内に結論を出すことになる。欧州は素粒子研究計画を5年ごとに見直しており、その期限が来年に迫っているためだ。先端加速器科学技術推進協議会の松岡雅則事務局長は「日本として意思表明をする最後のチャンス。これを逃せばILC計画は頓挫してしまう」と危機感を募らせる。

 中国は既に独自に次世代加速器の建設計画を進めており、日本の決断次第では素粒子物理学の主役の座を中国に奪われる可能性がある。10月には、ポール・ダバー米エネルギー省科学担当次官が来日し、推進派議員と懇談。「日本政府が積極的姿勢を示してくれることを期待する。誘致が決定すれば建設マネジメントや技術面で支援していきたい」と述べた。

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