評伝

日台構築に尽力、知日派を悼む 笑顔が似合う現場主義者、江丙坤氏

 台湾政財界きっての知日派で、親密な日台関係の構築に重要な役割を果たした江丙坤氏が、85年の生涯を閉じた。1972年に外交関係を断たれた日本をはじめ、国際空間を狭められた台湾が、対外関係で現実的な結び付きをいかに維持し、拡大しうるか。交渉の現場を常に大切にしたステーツマンでもあった。

 江氏が立法院副院長(国会副議長に相当)だった2003年ごろ、台北市内の公邸で教えてくれた逸話がある。

 「通産省(現経済産業省)の裏口からこっそり入って、森喜朗通産大臣(当時)にお会いしたんだ」

 江氏が経済部(経産省に相当)政務次官だった1993年2月のこと。日本側は中国の反発を懸念し、台湾高官との接触は極力、避けていた。だが、高官のメンツにこだわらず「目立たない非公式の面会でも構わない」と粘り勝ち。森氏と信頼関係まで築いた。

 面会を契機に、江氏は国交のない日台間の官公庁交流に道を開き、民間企業の相互協力も加速させた。

 WTO(世界貿易機関)への台湾の加盟交渉では、日本側の支援も取り付けた。

 中国国民党の副主席や対中国窓口機関のトップを経て、2014年に東京スター銀行の会長に就任。翌年春の叙勲で、日本政府から旭日重光章を受章した。

 叙勲では「幸いにも皇居に正面から入ることが許された」。今年5月、数年ぶりに台北で会った江氏は屈託なく、思い出話に花を咲かせた。いつでも笑顔が似合う現場主義者だった。(河崎真澄)

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