論風

方向性抜き、IPCC報告 「1.5度報告」評価できるもすべきは「行動目標」 (1/2ページ)

  この10月初旬に、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「1.5度報告」を提出した。これは、パリ協定が地球の将来の平均気温の上昇を2度以内、できれば1.5度への抑制に努力すべきだという目標を定めたことに対して、気候変動枠組み条約の締約国会議がIPCCに(1)温度上昇を1.5度に抑えたときの環境や社会へのインパクト(2)温度上昇を1.5度に抑えるための温室効果ガス排出経路-を示すことを求めたものである。依頼から報告提出まで2年半という比較的短い期間での作業だが、1000ページを超える詳細な報告書を作ったIPCCの努力は一応評価できる。(地球環境産業技術研究機構理事長・茅陽一)

実現に大変な努力必要

 この報告の内容はどうか。まず影響だが、2100年までに起こる海面上昇は1.5度目標実現の場合、10センチ小さくなる、と予想される。少ない量に思われるが特に太平洋地域の島嶼(とうしょ)諸国には大きな影響を持つだろう。また、サンゴの場合、従来2度上昇の場合はほとんど白化すると考えられているが、1.5度の場合は3割は少なくとも生き残るだろう、という。

 影響の大きいのは、生物の生存圏の広さで、大気温が上昇するとその範囲が狭くなるといわれるが、この報告ではその生存圏が半減する比率の増加が1.5度の場合は昆虫が6%、植生が8%、脊椎動物が4%とさほどではないのに対し、2度に上がるとその値が昆虫18%、植生16%、脊椎動物8%と倍増ないしそれ以上となり大きな影響が出てくる、という内容を示している。

 このように温度上昇を1.5度までに抑制することは、従来いわれてきた2度上昇のケースに比べると悪影響がいろいろ少なくなるわけだが、それでは1.5度に温度上昇を実現するための排出シナリオはどうなるか。すると、この報告によると2030年には二酸化炭素(CO2)を45%、50年にはなんと100%削減を実現しなければならないという。現在の各国目標(NDC)だと世界のCO2は30年には現状よりむしろ増えて年400億トンをかなり超えると推定されていることを考えると、この1.5度の排出曲線を実現するためには大変な努力がいる、ということは誰でも分かるだろう。

 例えば、この報告ではその排出曲線に対応する電源構成について説明しているが、それだと50年には電源の70~85%が再エネで占められ、石炭火力はゼロ、となっている。およそ現在の電源構成とは懸け離れている。

 このように1.5度目標であると2度に比べていくつか悪影響がかなり減るが、排出面での対応は1.5度目標では極めて難しくなる。では人類はどう行動すべきか。

CO2排出をゼロに

 ただ、この報告はこうした具体的に人類が行動すべき方向については一切述べていない。これは、従来のIPCCの原則が、政策に資する情報を供給するのはよいが、政策の策定に直接関わるような情報は示すべきでない、という、IPCCがあくまで学術団体で政策決定者とは一線を画する、という考えからの姿勢なのだろう。

 しかし、温暖化に対して人類が対応していかなければならないことは明白である。では、人類はどう対応すべきか。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus