EU首脳会議開幕 英首相、命綱の譲歩要請へ バックストップ焦点

12日、与党による信任投票に勝利した後、首相官邸前で会見するメイ英首相(AP)
12日、与党による信任投票に勝利した後、首相官邸前で会見するメイ英首相(AP)【拡大】

 欧州連合(EU)首脳会議が2日間の日程で13日、ブリュッセルで始まった。メイ英首相は与党保守党の下院議員による12日の信任投票を何とか乗り切り、命綱と頼む譲歩を求めてEU首脳会議に臨む。

障壁設置回避が鍵

 メイ首相は信任投票で勝利したものの、3分の1を上回る議員の不信任表明でその権威は著しく傷付き、反対派と妥協するために2022年までに予定される次期総選挙を党首として戦うことはないだろうと認めた。

 EU離脱まで3カ月余りを残すばかりの状況で、メイ首相がEUと取り決めた離脱条件が英議会の承認を得られる兆しはほとんどなく、「合意なき離脱」とそれに伴う政治的・経済的混乱のリスクは高まりつつある。

 こうした状況を打開するには、英・EUが通商協定を締結できなくてもアイルランド国境へのハードボーダー(物理的障壁)設置を回避することを保証する「バックストップ」条項について、メイ首相がEUから譲歩を取り付ける必要がある。

 離脱合意に関してコックス英法務長官がメイ首相に送付した法的助言は、法的にはアイルランドとの国境をめぐる安全策に英国が「無期限」に拘束されると指摘。これは英国がEU規則に縛られることを意味し、保守党の離脱強硬派の強い反発を招いた。信任投票で首相への造反に加わった議員の多くはバックストップへの反対が動機となっており、英国の他の地域から英領北アイルランドを分離するような合意は支持できないと主張する。

 メイ首相は信任投票後にテレビカメラに向かって発言した際、バックストップに言及し、「明日、EU首脳会議に赴くに当たり、下院議員らの懸念を和らげる法的・政治的保証を求めていくつもりだ」と述べた。

個別会談成功せず

 ただ、EUに譲歩を促すメイ氏の働き掛けはこれまでのところ成功していない。11日にはオランダのルッテ首相、ドイツのメルケル首相、トゥスクEU大統領(常任議長)、EUの行政執行機関である欧州委員会のユンケル委員長と相次いで会談したが、彼らのメッセージは似通ったものだ。すなわち、EUには保証を与える余地はあるが、離脱案の再交渉に応じるつもりはなく、英国が求めるようにバックストップを暫定的とするつもりはないというものだ。

 EU当局者は12日、ブリュッセルで英国を除く加盟27カ国の大使との会合を行った後、記者団に対し、EU首脳は既に合意が成立している英国のEU離脱政治宣言の内容を強調させるだけだと述べた。

 当局者らは英国のEU離脱合意の再交渉は「不可能」だとし、バックストップをめぐる保証に法的拘束力を持たせる意向はなく、恐らくは首脳声明だけになるとの見通しを示した。英国が望むようなバックストップの終了日に関する文言が声明に盛り込まれる可能性は低いとした半面、英国が通商協定を結ばず離脱した場合にバックストップ条項が無期限に続く状況に陥ることをEUは望んでおらず、そうした事態の回避に全力を尽くす旨の文言を加える用意があるという。

 また、EUはメイ首相が退陣した場合の対応策を考えていないとした上で、仮にメイ氏が首相の座を追われることになっても、次期首相が就任するまで英国の離脱に関してEUが何か動くことは恐らくないだろうと語った。(ブルームバーグ Alex Morales、Tim Ross)