ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」、まさかの“お宝”に!? なぜ注目されているのか (1/6ページ)

 耳元でプーン。オフィスや家のなかで、ハエが飛んでいてイライラしたことがある人も多いのでは。汚いイメージもあるので、「この世からいなくなればいいのに!」と思ったことがあるかもしれないが、そのハエに“お宝”が眠っているかもしれないのだ。

 「はあ? なにバカなことを言ってるの? ハエは害虫。百害あって一利なし」と突っ込まれそうだが、なにもテキトーなことを言っているわけではない。福岡市に本社を構える「ムスカ」という会社が、ハエの一種「イエバエ」の幼虫を利用して、飼料や肥料を大量生産する予定なのだ。

 ムスカといえばアニメ『天空の城ラピュタ』に登場するムスカ大佐を想像するかもしれないが、この会社はどんなことをしているのか。ひとことで言えば、選別交配を繰り返しているだけ。

宮崎県にあるムスカの研究室。ここでイエバエの選別交配を行っている

宮崎県にあるムスカの研究室。ここでイエバエの選別交配を行っている

 「繰り返している」といっても、100回や200回といった話ではない。45年前、旧ソ連が宇宙開発の一環でイエバエを研究していて、それに目をつけたアビオスという会社が、20年ほど前に買い取る(その後、イエバエ事業をムスカが引き継ぐ)。六本木ヒルズがオープンしようが、リーマンショックが起きようが、ひそかに交配を重ね続けていて、現在研究室に生息するイエバエは1100代目なのだ。

 ここまで読んで、次のような疑問を感じた人もいるはず。「なぜ45年間も選別交配を続けているのか」「1100代目のハエはどうなっているのか」「ハエを飼って、どうやって稼ぐのか」など。記者も同じ疑問を抱いたので、同社で会長を務める串間充崇さんと、暫定CEOの流郷綾乃さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

 会社が傾き、イエバエを世話することに

 土肥:世の中には、たくさんの数の職業がありますよね。厚生労働省によると、職業は1万7000種類ほどあるそうですが、串間さんはなぜハエの選別交配に注目したのでしょうか?

 串間:旧ソ連の科学技術を購入して、日本企業などに紹介する「アビオス」という商社があるんですよね。現地に足を運んで、そこで面白そうな技術があれば、契約書を交わす。こうしたことを繰り返しているうちに、1000ほどの技術を持つことに。その中の1つに、イエバエ事業がありました。

 会社は権利を取得して、日本の企業などに売る。いわゆる転売ビジネスを展開していたのですが、先代の社長は「完全循環型リサイクル農園」をやりたかったんですよね。どこにでもあるようなトマトをつくっても、価格競争に陥るだけ。そうした状況に陥らないために、ブランド力のあるモノをつくらなければいけない。そのために「いい飼料」と「いい肥料」を探していたところ、「ロシアにスゴい技術があるよ」といった話を聞いたそうです。

 土肥:ひょっとして、それがハエ?

「自分がやりたかったことはこれだ!」