【水と共生(とも)に】大干魃で水枯渇の危機 南アフリカ、ケープタウンのいま (3/3ページ)

ビール醸造所内にある泉の水でプラスチック製のボトルを満たす住民=ケープタウン(ブルームバーグ)
ビール醸造所内にある泉の水でプラスチック製のボトルを満たす住民=ケープタウン(ブルームバーグ)【拡大】

  • ケープタウン近郊の村で、共同水栓から水をプラスチック容器に入れる住民(ブルームバーグ)
  • ドローンで撮影された干魃に見舞われたスイスの湖。水位は7メートル下がったといい、干魃は世界規模で進んでいる(AP)

 今年7月には、突拍子もない水不足解消計画が浮上した。「南極の氷山、曳航(えいこう)計画」だ。海難救助専門家、ニック・スローン氏のアイデアで、「輸送中の融解を防ぐため氷山を断熱繊維の膜で包み、超大型タンカーとタグボート2隻で南極からケープタウンまでの約2000キロメートルを、卓越海流を利用して曳航する」というものだ。運ぶ氷山は「長さ1キロメートル、幅500メートル、深さ250メートルの上面が平らな氷山」が対象という。ケープタウンまで氷山を運べたとして、どうやって取水するのか。最低3カ月の曳航費用(約110億円)や、沖合の氷山から取水し市内まで送水する費用(約55億~67億円/年)の負担は誰がするのか。水かけ論が沸騰している。

 雨期(今年8月)に入り、久しぶりの大雨で水不足は大きく改善し、周辺ダムの貯水率は62%まで改善した。“デイゼロ”のXデーは来年に持ち越されたが、安心はできない。来年の降水状況など誰も分からないからだ。

 世界を見渡すと、地球温暖化の影響とみられる水資源不足はケープタウンだけの話ではない。北米、南米、オーストラリア、アジア各国の多くの大都市で、深刻な水不足に陥る危険性が年々高まっている。国連などの報告書によると、2030年まで世界の水需要が供給能力を40%以上上回る可能性があるという。

 干魃による世界経済の低迷や、水資源をめぐる格差の拡大が世界的に懸念されている。

【プロフィル】吉村和就

 よしむら・かずなり グローバルウォータ・ジャパン代表、国連環境アドバイザー。1972年荏原インフィルコ入社。荏原製作所本社経営企画部長、国連ニューヨーク本部の環境審議官などを経て、2005年グローバルウォータ・ジャパン設立。現在、国連テクニカルアドバイザー、水の安全保障戦略機構・技術普及委員長、経済産業省「水ビジネス国際展開研究会」委員、自民党「水戦略特命委員会」顧問などを務める。著書に『水ビジネス 110兆円水市場の攻防』(角川書店)、『日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む』(技術評論社)、『水に流せない水の話』(角川文庫)など。