【第28回地球環境大賞】先進国と途上国 対立解消が最大の成果 夜の議場、歓声包む(3-2)

実施ルールが採択され拍手する各国の代表団(15日)
実施ルールが採択され拍手する各国の代表団(15日)【拡大】

  • 海面上昇の危険にさらされる太平洋の島国ツバル(2014年1月)
  • 演説する原田義昭環境相(12日)
  • 演説するグテレス国連事務総長
  • アーノルド・シュワルツェネッガー氏(3日)

 ≪会場トピックス≫

 ◆先進国と途上国 対立解消が最大の成果 夜の議場、歓声包む

 「世界が待ち望んだ成果だ」。パリ協定の実施ルールが採択されると、交渉を続けた各国代表団から盛大な拍手が送られ、歓声が夜の議場を包んだ。

 会期最終日の14日も先進国と発展途上国の溝は埋まらず、各国は徹夜で協議を行った。15日もぎりぎりの交渉が進められ、夜までもつれ込んだが、温室効果ガス削減の検証方法などで対立した双方は土壇場で立場の違いを乗り越え、ようやく決着を見た。

 「私たちは将来を見据えた一歩を踏み出した」。議長を務めるポーランドのクリティカ環境副大臣が合意を宣言し、木づちで机を打つと会場を埋めた各国の代表団は総立ちに。どよめきと歓声が湧き、長い拍手が続いた。

 採択を見守った原田義昭環境相は「先進国と途上国の対立が解消されたことが最大の成果だ」と語った。温暖化の影響で国土消滅の危機が懸念される太平洋の島国ツバルの代表団は「今日、世界は正しい決断をした。10年後か20年後、わが国の自然環境が救われると信じている」と強調した。

 ◆海面上昇で島国の閣僚から不満噴出

 各国の環境相らによる閣僚級協議では、地球温暖化に伴う海面上昇に直面する島国から「生活が脅かされている」「被害を減らす緊急の対策が必要だ」と、取り組みが進まない現状に不満が噴出した。

 11日に始まった閣僚級の演説では「今の対策が不十分なのは明らかだ。子どもたちの未来が危ぶまれている」(クック諸島の首相)などと島国から批判が続出。ツバルの首相は先進国に「海面上昇の被害から海岸を守るため、資金支援の拡大が不可欠だ」と迫った。

 パリ協定は気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指すが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月の報告書で、1.5度に抑えても海面は最大77センチ上がると予測。2度ではさらに10センチ上昇し、影響を受ける人は最大で1千万人増えるとした。閣僚らは繰り返し報告書に言及し、危機感を示した。

 ◆削減目標引き上げ促す閣僚級会合も開催

 各国が温室効果ガスの排出削減の状況を報告し、互いに削減目標の引き上げを促す閣僚級会合も開かれた。今の取り組みでは地球温暖化の抑制には不十分だとの危機感が背景にある。日本は原田義昭環境相が参加し、長崎県五島市沖に設置された洋上風力発電施設を紹介。魚礁のような役割も果たしているため、周辺は魚が集まり良い漁場となっており、再生可能エネルギーへの転換と漁業の両立を目指していると説明した。

 パリ協定では、全ての国が排出削減を求められる。あらかじめ削減の数値目標が割り当てられるわけではなく、各国が目標を掲げ、達成状況を5年ごとに報告して検証し合うことで目標水準の引き上げを図る。

 初回の検証は23年に実施される予定だが、今の各国の削減目標では気温が3度上昇するとの予測があり、手遅れになりかねないとして前倒しでの実施となった。今回の議論を踏まえ、各国は今の目標を20年までに更新することが望まれている。

 ◆温暖化「生活と命の問題」 グテレス国連事務総長

 国連のグテレス事務総長が演説し「多くの国で地球温暖化が生活や命に関わる問題になっている。われわれの対策は不十分で遅すぎる」と強い危機感を示し、早急な取り組みの強化を訴えた。また、温室効果ガスの削減目標を大幅に引き上げなければ「北極や南極の氷の減少や、海面上昇が続くほか、大気汚染に伴う死者が増え、世界で相当な数の人が水不足に直面する」と警告した。

 会議では一部の国の首脳らも演説。米カリフォルニア州の前知事で映画俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏も急遽登壇し、米国のパリ協定離脱方針を踏まえ「政府は後退しているが、州や市といった自治体は協定に賛同している。温暖化は自治体のリーダーにとって重要な問題だ」と強調し、大きな拍手に包まれた。この日は20を超える国の首脳級が集まった。