【第28回地球環境大賞】COP24 「パリ協定」実施ルール採択 温暖化対策大きく前進(3-1)

COP24でパリ協定の実施ルール採択を喜び合う参加者ら(15日)
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  • 議長を務めたクリティカ環境副大臣(15日)

 ■COP24 「パリ協定」実施ルール採択 温暖化対策大きく前進

 ポーランドのカトウィツェで開かれた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)は2020年に始まる「パリ協定」の実施ルールを採択、先進国と発展途上国が共通の厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることになった。これにより、国際的な温暖化対策は仕組み作りに力を注ぐ段階を終え、各国が脱炭素の取り組みをどう強化するのか、具体的な行動が問われることになる。議長を務めたポーランドのクリティカ環境副大臣は「合意により、パリ協定の開始を確保できる。人類のために一歩を踏み出すことができた」と意義を強調した。

 パリ協定は2015年に採択され、今回のCOP24がルール作りの交渉期限だった。交渉は3年にわたり、先進国と途上国で内容に差をつけるかどうかが焦点だった。採択されたルールでは、25年までに各国が出すことになる新しい削減目標や削減の進み具合を検証する手法は、共通の厳しい基準を適用すると規定。詳しいデータの提出などが必要で、取り組みが透明化されて対策強化を促しやすくなると期待される。

 途上国への資金支援については、可能であれば先進国は20年から2年ごとに将来の拠出額を提示するよう求めた。削減目標を出さない国には順守委員会が対応するが、懲罰や制裁は科さない。

 一方、30年より先の削減目標をどのぐらいの頻度で更新するかなど、意見が大きく隔たるものの、協定の運用開始に支障がない部分は継続協議とした。

 COP24はパリ協定の実施ルールを採択し、20年スタートに道筋を付けたが、交渉は最終盤まで激しい対立が続いた。国際社会が団結して地球温暖化対策を強化しなければ、取り返しの付かない被害を招くという科学の警告が妥結を後押しする形となった。

 国連の科学者組織、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今年10月にまとめた報告書で、産業革命前からの気温上昇が早ければ30年に1.5度に達し、海面上昇や異常気象の被害が甚大になると警告した。「1.5度」への抑制は、パリ協定が努力目標として掲げる水準だ。

 会議では先進国、途上国双方から報告書への言及が繰り返され、危機感の共有が「空中分解だけは避けたい」との機運を醸成。ルール作りを成し遂げる意欲は一貫して高かったといえる。

 国際交渉は大きなヤマを越えたが、ルール作りは対策を進める準備にすぎない。気温上昇は既に1度に達し、温暖化は危険水域目前だ。科学の警告を生かして深刻な被害を避けるには、脱炭素社会に向けて各国が経済や社会の在り方を大胆に転換することが不可欠になる。

 〈識者談話〉

 ◆施策にどう生かすかが課題

 平田仁子・気候ネットワーク理事「すべての国が協力して地球温暖化対策に取り組むというパリ協定の考えに沿ったルールがまとまった。温室効果ガスの排出削減の進捗を確認するための情報提出の義務付けなど、先進国と発展途上国に共通の仕組みに合意したことは評価できる。今後、各国がルールに基づいて実際の施策にどう生かすかが課題だ。二酸化炭素を多く排出する石炭火力発電を推進する日本は、会期中に多くの批判を受けた。方針転換が迫られている」

 ◆予想を上回る内容

 田村堅太郎・地球環境戦略研究機関上席研究員「パリ協定のルールは、各国の温室効果ガスの削減目標を将来にわたり引き上げていく仕組みの骨格が決まり、予想を上回る内容だ。一方、削減目標を大幅に高める機運がこの会議でつくれるかどうかも注目されたが、成果は限定的だった。パリ協定が目指す水準に気温上昇を抑えるには、今後数年の取り組み強化が決定的に重要だ。社会経済システムの急速な大転換が必要で、取り残される人が出ないように配慮して進めなければいけない」

【用語解説】パリ協定

 地球温暖化の深刻な被害を避けるための国際協定で、京都議定書に代わり2020年から始まる。今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出を実質ゼロにし、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えるのが目標。全ての国が削減目標を掲げて国内対策に取り組み、その状況は5年ごとに検証し、目標の引き上げを図る。トランプ米大統領は昨年6月、離脱を表明したが、協定の規定で20年11月までは抜けられないことになっており、米国もルール作りの交渉に参加した。