真の狙いは仏法の教え
ただ、単に斬新さ、奇抜さを強調しているわけではない。「仏教の教えを知ってもらうという『軸』をしっかりと持ちながら新しい取り組みを続けたい」と磯部さん。そのため、ぜひ参加してほしいと強調したのが、期間中、連日行われた法話「聞いてみよう!お坊さんのはなし」だった。
期間中は計40人の僧侶が登壇し、身の回りで起こった出来事や日常のなかで感じたことを交えながら、宗祖法然や仏教の教えを紹介。参加者全員で木魚をたたいて念仏を唱える体験も行われた。
連日100人近くが参加し、時には建物内に入りきれず、会場外から耳を傾ける拝観者の姿も。親子連れや若いカップル、外国人観光客も少なくなかった。
初めて法話を聞いたという東京都東村山市の会社員、實藤(さねふじ)愛里さん(26)は「堅苦しいイメージがあったが、笑いを交えて分かりやすく話してくれた。思っていた以上に興味深く聞けた」と話したうえで、「自分の人生観を見直すきっかけになった」と振り返った。
試みが徐々に定着し、昨年の法話には、過去最多の約6350人が参加した。特に若い世代が目立つようになったといい、法話を行った僧侶も「ライトアップが目的で来た若い世代にも、前のめりになって話を聞いてくれる人も多く、仏教により関心を持ってくれるきっかけになったのでは」と手応えを感じている。
「ネット炎上」も供養
こうした取り組みは他の寺院の間で広がりつつある。
その一つが、浄土真宗本願寺派の照恩寺(福井市)の住職、朝倉行宣(ぎょうせん)さん(51)が考案した「テクノ法要」だ。
極楽浄土を表現したきらびやかなプロジェクションマッピングが投影されるなか、お経に合わせてリズム良く鳴り響くテクノミュージック。28年に初めて行われて以降、幅広い世代で静かな人気を集めている。
参拝者の高齢化が進む現状への危機感から生まれたアイデアは「法要を最先端の技術で表現したらどうなるのか」という疑問を、クラブのDJとして活躍した経験を生かすことで実現された。