【高論卓説】注目のサウジ女性人権問題 生き方縛る後見人制度が明るみに

 サウジアラビアにおける女性の人権問題が世界の注目を集めている。12日に亡命を認められてカナダ入りした同国女性、ラハフ・ムハンマドさん(18)の事件があまりに衝撃的であったからである。

 ラハフ女史は家族とともに訪れていたクウェートを5日にひそかに出国し、翌6日、タイのバンコク・スワンナプーム国際空港に到着した。そこで豪州行きの便に乗り換えて同国に亡命しようと計画していたからだ。だが同女史は、クウェートへの帰還便に搭乗させるようにとの家族からの通知を受けた入国管理局に拘束されてしまった。ただし、あまりに激しく抵抗したため、タイ当局は同女史を空港内のホテルに一旦収容することとした。

 ここから予想外の展開が生まれることとなった。同女史がホテルの部屋をロックして籠城し、ソーシャルメディアで窮状を訴えた結果、国際的な関心と同情が集まり流れが大きく変わったからである。ちなみに同女史は「ホテルで亡命を求めています。できるだけ早期に保護してくれる国家が必要です」「家族はとても厳格で私が髪を切っただけで部屋に6カ月も閉じ込め、肉体的、心理的に虐待しました」「人生と仕事を愛し野望を抱いていますが、家族はそのような生き方を阻んでいます」「(サウジに)送り返されれば投獄され、釈放され次第、家族に殺されると100%確信しています」と訴えていた。

 結局、同女史は7日、タイ当局の要請を受けた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の保護下に入り市内のホテルに移されることとなった。そこで亡命先を探していたUNHCRに手を挙げてきたのがカナダであったというわけだ。

 ところでカナダ入り3日後の15日に記者会見したラハフ女史は、サウジの厳格な「後見人制度」を非難した。後見人制度というのは耳慣れない言葉だが、女性は弱いので男性が守らねばならないとの理屈によりサウジで適用されている制度のことである。実はサウジでは、女性は同制度により後見人(夫、父親、兄弟、息子、その他の親族男性)の同意なしに、結婚や就職、旅券取得、旅行、高等教育機関への就学、銀行口座の開設などはできない。このようにサウジでは女性が自分で何かを選択できる余地はほぼなく後見人の判断に従わねばならない状態に置かれている。

 このためラハフ女史は記者会見前日のインタビューで「私の物語が世界に知られたことでサウジの法律の改革が進むことを望む」と述べ、一日も早いサウジ社会の変革を訴えていた。

 だがサウジ政府の支援する同国の「国家人権協会(NSHR)」は同日、「数カ国が家族の価値観に反抗するサウジ人非行女性の国外逃亡を後押しし亡命を認め受け入れようとしている」(15日付のガーディアン紙)との声明を発出し、国名には触れずに数カ国を非難した。

 果たして今回のラハフ女史の亡命騒動が、欧米諸国や国際人権団体などによるサウジの人権の状況、特にサウジ人女性の人権の見直しや改善を求める動きにつながることになるのか否か注目したい。

【プロフィル】畑中美樹

 はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。