【寄稿】COP24カトヴィツェ会議を振り返って WWFジャパン自然保護室次長・小西雅子 (1/3ページ)

パリ協定の実施指針を採択し、COP24の会場は拍手に包まれた=現地時間2018年12月15日、ポーランド・カトヴィツェ(C)WWFジャパン
パリ協定の実施指針を採択し、COP24の会場は拍手に包まれた=現地時間2018年12月15日、ポーランド・カトヴィツェ(C)WWFジャパン【拡大】

  • ≪図パリ協定の実施指針≫出所:COP24決定(https://unfccc.int/katowice)からWWFジャパン作成

 ■パリ協定のルール合意と1.5℃特別報告書

 □WWFジャパン自然保護室次長/気候変動・エネルギープロジェクトリーダー小西雅子

 パリ協定の運用ルール(実施指針)が、ポーランド・カトヴィツェで開催されたCOP24(2018年12月2~15日)で会期延長の末、無事採択されました。

 これに先立つ18年10月には、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)から「1.5℃特別報告書」が発表され、世界的に注目されました。気温上昇を1.5℃に抑えるための排出経路や、世界の気温上昇が1.5℃になった場合と2℃になった場合の気候変動の影響について詳述した報告書で、COP24でもその存在が際立っていました。

 ◆パリ協定のルール合意まで

 パリ協定のルールづくりでは、協定の条項に沿った議題ごとに議論が行われ、それぞれの条項ごとにルールが定められていきます。議題には、緩和(削減)、適応、透明性、グローバルストックテイク、遵守、資金、市場メカニズムなどがあります。議論に基づいて議題ごとの交渉文書を改定し、それを基にまた議論し、文書を改定していく-という作業を何度も繰り返していきます。

 各国は、交渉のタイムリミットが迫る中でも、新しい交渉文書が出るたびに「これでは自国の意見は反映されていない」「バランスがとれていない」などとそれぞれの言い分を強く主張しました。

 COP24の2週目半ばからは、各国の閣僚級による“政治交渉”が行われました。最後まで難航したのは、国連気候変動交渉の長年の懸案である「差異化」の問題でした。差異化とは、パリ協定の運用ルールについて、先進国と途上国との間にどのような差をつけるのが妥当か、というものです。

 パリ協定がすべての国を対象にしているといっても、開発の程度に大きな差がある途上国に対し、先進国とまったく同じルールを当てはめるのは無理があります。であれば、柔軟にルールを運用して先進国と途上国の間にどのような差を設けるか(差異化)をめぐり、両者の間で深刻な対立がずっと繰り広げられてきました。

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