社会・その他

準天頂衛星使い津波早期警戒 東海大などの研究チーム、システム開発へ (1/2ページ)

 東日本大震災からまもなく8年。東北から関東の太平洋沿岸に高さ10メートル超の大津波が押し寄せ、亡くなった人のうち約9割が溺死した。津波による被害を小さくできないか-。東海大学や東京学芸大学などの研究チームが民間企業の協力を得ながら、準天頂衛星システムの一つ「みちびき3号」を使った津波早期警戒システムの開発に取り組んでいる。

 大気電気学が専門の東京学芸大教育学部の鴨川仁(まさし)准教授は2011年、津波の発生による空気振動がきっかけで、上空約300キロにある電離層に含まれる電子が減少して起きる「電離圏ホール」の存在を突き止めた。この現象が起きると衛星通信に使われる電波の周波数が大きく乱れる。みちびき3号はこれを検知し、地上に通信する。

 みちびき3号は赤道上、東経127度のインドネシア上空にある静止衛星だ。そこから、東海・東南海・南海トラフ地震の震源想定域を含む日本の南西海域の上空を常時監視している。

 東日本大震災では地震の規模を示すマグニチュードが何度も修正されたため、その後の津波の到達予想時刻も逐次修正され、避難の際に大きな混乱を招いた。

 海面が盛り上がった高さを観測する手段は津波観測ブイによる方法があるが、敷設に1基当たり数億円かかるため、日本近海には10カ所ほどしかない。

 システムを考案した一人である東海大海洋研究所の長尾年恭所長は「海面の盛り上がりを観測するには人工衛星の活用が有効。なかでも赤道上空に静止している、みちびき3号が最適」と話す。さらに全国約1300カ所の電子基準点を活用した国土地理院による地殻変動の観測システムGEONET(ジオネット)のデータともつき合わせることで、津波の到達予測だけでなく、陸上への遡上(そじょう)高予測も可能になるという。

 ただ、このシステムにも課題がある。津波発生後の空気振動が電離層に届くまでに約9分かかることだ。このため外洋に面した海岸では情報が間に合わない恐れがある。

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