東京地検の久木元伸(くきもと・しん)次席検事は8日、定例記者会見で、東京地裁が会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(64)の保釈にあたって決めた監視カメラの設置など約10項目の条件について「実効性がない」との見解を示した。地裁の決定内容を検察幹部が公の場で批判するのは極めて異例。
弁護人らによると、地裁はゴーン被告の保釈条件として、指定された住居の出入り口などに監視カメラを設置することや、通信環境が制限されたパソコンや携帯電話を使用することなどを義務付けた。これらは保釈請求の際に弁護側から提案。地検は不服だとして準抗告したが、地裁はこれも棄却した。
久木元氏は準抗告した理由について「いまだ証拠隠滅の恐れがある上、保釈条件には証拠隠滅を防ぐ実効性がないと考えた」と説明。今後について「公判へ向けてなすべきことを粛々と進める」と語った。
保釈条件をめぐっては、携帯電話で海外通話が可能なことや、1泊の短期旅行は可能で監視カメラから逃れることができる点などが「抜け道だらけ」(検察関係者)とも指摘されていた。条件に実効性がないとした理由について、久木元氏は「報道されている通りではないか」と述べた。
保釈を認める地裁決定を受け、ゴーン被告は6日、保釈保証金10億円を納付し、東京拘置所(東京都葛飾区)から保釈された。