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大坂選手と契約したナイキの真意とは 裏側には緻密な計算 (1/2ページ)

 テニスの全米、全豪を連続制覇した大坂なおみ選手が5日、足元を支えるシューズと身にまとうウエアの契約メーカーを、アディダスからナイキに変更した。業界2位のアディダスに大差をつけて市場の覇権を握るナイキは、選手契約に投下する金額の大きさから、「金に物を言わせて買いあさっている」とも言われるが、その裏側には緻密な計算がある。(フリーランスプランナー・今昌司)

 一般的に、スポーツ選手との契約には、その契約で得られる権利を活用した総売上高の10%が契約金の目安とされる。大坂選手の契約は年10億円は下らないと推測されているが、全米制覇後にアディダスが引き上げた契約金が、年9.5億円(報道より)ということを考えれば、決して契約金だけの判断ではないだろう。私の推測であるが、長期契約に加えて、大坂選手自身のブランディングに寄与する活動も保証しているのだろう。

 ナイキとスポーツ選手やチームとの契約の裏側には、単に肖像権の活用や商品化などの権利という収益に結び付く要因のみならず、ナイキのブランド価値を、当該選手の存在価値を高めることによって、相乗的に拡大していこうとする思惑がある。

価値観創出に期待

 世界ナンバーワンとなった大坂選手は、テニスというスポーツカテゴリーのみならず、ナイキというブランドそのものに対して新たな価値観をもたらす存在としてナイキは見ている、と考えられるのだ。ナイキの世界市場における重点カテゴリーにテニスはない。ランニング、バスケットボール、サッカーである。では、なぜナイキは大坂選手との契約に至ったのか。

 ヒントは、ナイキがテニス界の貴公子、ロジャー・フェデラー選手との契約を失ったことの真意にある。昨夏、フェデラー選手は20年以上に及ぶナイキとの関係に決別してユニクロとの間で10年3億ドル(約335億円)という契約を結んだ。注目すべきは10年という契約期間と、契約当時のフェデラー選手の37歳という年齢である。テニス選手として決して若くはない。現在でも世界のトップの地位を維持しているものの、現役選手に終わりを告げる時期は、さほど遠くはない。

 しかし、ユニクロは、選手としてのフェデラー選手の価値以上に、彼の社会貢献に熱心な姿や、引退後の彼のビジョンに共感を示している。大げさに言えば、ユニクロはフェデラー選手の生涯価値に着目したのであろう。アスリートとしての姿とは別の顔が持つ魅力。逆にナイキは、現在のフェデラー選手のアスリートとしての存在価値にユニクロほどの評価をしていたとは思えない。

 そこに、ユニクロとナイキには大きな戦略的な違いがある。ナイキは、いつの時代にもアスリートとともにあるブランドとしての存在価値を強く示す。だからこそ、ナイキはアスリートの価値をナイキ自らが高めようとする。

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