【生かせ!知財ビジネス】特許年報2014発表、キーワードは「世界」

2014.5.24 05:00

 特許庁はこのほど、知的財産制度とその活用状況、諸施策を統計資料で解説した「特許行政年次報告書2014年版」を発表した。「世界最速」「世界最高品質」「グローバル展開」などをキーワードに審査業務を中心とする今後の施策の方向性が示唆されている。

 「世界最速」では、出願人が審査請求後に特許庁から初の審査通知(FA=First office action)を受けるまでの期間を世界トップクラスの11カ月以内とする「FA11」を10年かけて達成した。今後は「FA10」に加え、最終的な権利化までの期間(TP=Total Pendency)を現在の約30カ月から14カ月以内とする「TP14」を掲げ、23年度までの達成を目指す。国内の早期権利化が進めば海外での権利化も早まる可能性があり、出願人は特許権行使期間が長くなる上、製品のライフサイクルが短い産業では新技術を早期に市場投入できるなどの利点が生まれる。

 「世界最高品質」では、裁判などで無効になることのない、安定的で強く、権利範囲が広く、役立ち、世界に通用する特許権の形成を目指す。欧米の特許庁では品質管理や品質保証のフレームワークがあり、日本の特許庁も審査基準室や品質監理室で内部点検してきたが、今後は「特許審査に関する品質ポリシー」の下に世界最高品質の実現に取り組む。品質管理の専門家や学識経験者らによる外部委員会を8月までに立ち上げる予定だ。

 「グローバル展開」では、産業の国際競争力強化が求められる中、海外への特許出願は増加したが、欧米のレベルには達していないため、同庁は高品質な知財権を国内外で早期に獲得できる体制や制度を構築し、支援する。

 さらに、同庁の審査能力や調査能力を世界に周知し、出願人が各国で権利を得やすい環境を整えていく。特許協力条約(PCT)国際出願での英語の国際調査業務は各国特許庁の腕の見せどころだが、今後は企業進出が続くアジア諸国から業務を積極的に引き受けていく。

 特許庁企画調査課の今村亘・特許戦略企画調整官は「日本で特許化されれば世界でも通用するような強く高品質な権利を作っていこうじゃないか、ユーザー(出願人)が本当に欲しい権利を作っていこう、という気持ちで特許庁は今年度も取り組んでいく」と抱負を語った。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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