世界最小メガネザル保護へ 比の絶滅危惧種 関係団体が啓発促進

2018.10.30 05:00

 フィリピン南部ボホール島の山中に、世界最小といわれるメガネザル「ターシャ」が生息している。体長は成長しても12センチほど。主に同国南部の島々にすむとされるが、森林伐採や密猟が原因で絶滅が危ぶまれており、関係団体が保護と啓発を進めている。

 島内の最大都市タグビラランから北東に約10キロ。鬱蒼(うっそう)とした森林の中にターシャの保護区がある。1996年に設立された「フィリピン・ターシャ財団」が運営し、ターシャを広く知ってもらおうと保護区の一部を公開している。

 「しーっ」。係員が口に指を当て静かにするよう求めると、騒がしかった団体客が静まった。歩道から約1メートル先にある細い木の枝に、成人男性の拳より小さいターシャが両手でつかまっていた。

 ターシャは繊細で、騒音がストレスになる。少し強い風が吹いただけでびっくりしたようなしぐさを見せ、風が当たらない木陰に急いで移動することも。カメラのフラッシュも禁止されている。

 ターシャを研究しているリチャード・パリリヤ博士によると、ボホール島には1000匹以上が生息すると推定されるが、森林伐採と密売目的の猟のため減り続けている。寿命は約20年で、1年に1匹しか子供を産まないことも減少に拍車を掛けているという。

 島にはこの保護区のほかにもターシャを観察できる施設があり、別の団体が啓発活動を続けている。ただ、動物保護を管轄する環境天然資源省は人員不足で、ターシャだけを優先するわけにもいかず、取り組みが不十分なのが実情だ。

 パリリヤ博士は「環境破壊を止めることが重要。ターシャの存在を多くの人に知ってもらうことが抑止力になる」と訴えている。(タグビララン 共同)

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