【IT風土記】沖縄発、“星の島”で動き出す新観光施策とは

 
中山義隆石垣市長

 那覇から南西へ約410キロ。東シナ海と太平洋に挟まれた石垣島は、竹富島、小浜島、西表島など11の有人島と無数の無人島から成り立つ八重山諸島の玄関口だ。手付かずの自然が売り物のこの島へ、近年、観光客が急増している。ICT(情報通信技術)を活用して、「星の島」と呼ばれる観光資源に、さらに磨きをかけようという取り組みが始まっている。(早坂礼子)

年100万人を超す観光客

 6月下旬。いちはやく梅雨が明けた沖縄県石垣市には真夏の陽光が降り注いでいた。島の南西部に集中している市街地にはコンクリートの低層建物が建ち並び、高台から珊瑚礁とエメラルドグリーンの海が見渡せる。どこか南の外国の街のようだ。

 この島には100万人を超す観光客がやってくる。1989年に約30万人だった観光客の数は2013年3月にゴルフ場の跡地に南ぬ島(ぱいぬしま)石垣空港が開港すると14年は約112万人、15年も約115万人に増えた。今年も5月までの累計が約50万人に達しており、100万人の大台を超すのは確実だ。東京からは直行便で日帰りも可能な約3時間、沖縄本島からも約1時間で着く日本のリゾート地として人気を集めている。

 増えているのは日本人観光客だけではない。海外からの訪問客も年に約20万人と着実に増えている。そのうち約7割を占めているのは台湾からの観光客だ。台北(台湾桃園国際空港)からはチャーター便のほかに「チャイナエアライン」の直行便が週2便就航している。加えて今夏からは香港のLCC(格安航空会社)「香港エクスプレス」便も週3便に増えた。台湾からのフライト時間はわずか55分、香港からも約2時間だ。

 訪問客は海からもやってくる。台湾の北部に位置する基隆(キールン)港から週2回就航しているクルーズ船は石垣まで所用時間5~6時間の近さと低価格で人気を集めているし、台湾南部の高雄からのクルーズツアーもある。中国の厦門(アモイ)などを出港した海外大型客船の寄港も年々増えている。

アジアから一番近い日本

 「石垣市は1995年9月に台湾の東海岸に位置する蘇澳鎮(スオウチン)と姉妹都市提携を結んでいます」と、同市観光文化課の翁長隼大観光推進班長が教えてくれた。駐在員を置くなど長年地道な交流を続けてきたところに新空港の開港と石垣港の整備が加わって台湾の人の石垣熱に火をつけたようだ。

 中山義隆石垣市長は「石垣と台北間は約280キロで、那覇に行くより近い。海外のお客さんにとって石垣は一番近い日本だし、日本のお客さんにとってはアジアに一番近い外国の雰囲気がある国内なんです」と胸を張る。

 市長の願いは「エアラインで来て宿泊するお客さんを増やす」ことだ。訪問外国人客で圧倒的に多いのはクルーズ利用で飛行機の利用は1万人弱に留まっている。クルーズ客の石垣滞在は船が港に停泊する午前から夕方までの時間に限られており、市内のスーパーやドラッグストアを訪ねて果物や日用品などを買っていく人が多いという。「ただ買い物をするだけでなく、ここに泊まって3食食べてもらい、その間に近隣の島々も訪ねて文化や歴史を感じてもらいたい。そうすれば長期滞在やリピーター客につながる。その人達が八重山の良さをSNSなどで発信してくれれば次のお客さんを呼び込む好循環ができる」とみる。

 目標は大きい。「台湾の台北近郊には約800万人が住んでいるが、その1%にあたる8万人が飛行機で来るようになったら大きなインパクトになる」と話し、「欧米のお客さんにも来てほしい。台北や香港経由で石垣に入ってくる人だけでなく、このごろは日本の航空会社も東京や大阪から石垣へ欧米のお客さんを呼び込むサービスを強化しているんです」と夢を広げる。

 石垣市の人口はいま4万9000人。近隣の島々を含めると約5万5000人だ。その就業人口のうち観光サービス業に従事している人は6割を超えており、八重山の盛衰は観光振興が握っている。

 「アジアに一番近い石垣島は海路や空路を通じて人やモノが交流する結節点(ハブ)になりうる。多様な文化をもった人達がこの島で交流することで宗教や国、人種を越えてお互いの理解が深まればいい」と中山市長。今後の課題は情報環境の改善だ。大容量、低価格の高度通信網の整備を核にした新政策は、島の観光資源である「星」の魅力を多くの人に伝えるだけでなく、離島のハンデキャップを埋める意欲的な取り組みでもある。

この続きはNECビジネス情報サイト「WISDOM IT風土記」でご覧ください