【IT風土記】秋田発 ドローン、自動運転…「近未来技術」に懸ける仙北市の未来

 
7月22、23の両日仙北市で行われたドローンテクニカルチャレンジ(仙北市提供)

 秋田県東部にある仙北市が「国家戦略特区」に積極的に名乗りを上げ、地域の活性化に取り組んでいる。小型無人飛行機「ドローン」や無人運転バスなどの実証実験を積極的に展開。近未来技術を地域に根付かせ、新しい産業や若者を呼び込むこと目論んでいる。

 実践的な活用法を模索

 7月22、23日、仙北市の田沢湖スポーツセンターの体育館で、ユニークなドローンの操縦競技会「ドローンテクニカルチャレンジ」が開催された。体育館にさまざまな障害物を設置し、ドローンで障害物を避けながら遭難者を見つけ出す。山岳遭難救助をテーマにドローンの操縦技術を競うもので、全国から多くの「パイロット」が競技に参加。学生部門も設けられ、大学や高校6校が競技に加わった。

 市がドローンの競技会を開催するのは昨年に続き2度目。前回はモータースポーツ競技として人気が高まっている「ドローンレース」の国際競技会を国内で初めて開催したが、今回は実践的な内容に衣替えした。

 「すでにドローンは実用的なステージに入っています。市内では山菜取りなどで山に入って遭難するケースは後を絶ちません。遭難者の人命救助にいかに貢献できるのか。そうした視点からの競技会を提案しました」と仙北市の門脇光浩市長は語る。

 日本一深い湖として知られる田沢湖、湯治場として人気の乳頭温泉郷や玉川温泉、江戸の風情の残る街並みがある角館など観光資源が豊富な仙北市は2015年、ドローンの飛行規制を緩和した「地方創生特区・近未来技術実証特区」の認定を受け、全国から大きな注目を集めた。

 市内に広がる国有林野の広いエリアでドローンを飛ばし、実用化に向けた実験に取り組んでもらうというもので、16年4月には、情報通信研究機構などがドローンを使って学校図書を搬送する実証実験を実施。3冊の本を積み、市内の小学校から中学校までの1.2キロを飛行した。また、内閣府の国家戦略特区プロジェクト「無人運転バス」の走行実証実験にも名乗りを上げ、11月、田沢湖畔の公道で実際に無人運転バスを走行。実際の公道を無人運転バスが走るのは国内初の試みだ。

 地方こそ利活用の幅が広い近未来技術

 さらに今年3月には経済産業省などが選定する「地方版IoT推進ラボ」の認定も受け、近未来技術を活用した新たなビジネスの掘り起こしや人材の発掘にも取り組む。緑に囲まれ、牧歌的な風景が広がる仙北市がなぜ近未来技術にこだわるのか。門脇市長はこう語る。

 「ドローンは都会よりも地方の方が利活用の幅が広い。無人走行運転もそう。人口が減れば、税収も減り、予算の縮小してしまう。でも、行政サービスは劣化させるわけにはいきません。人に頼れない部分は『技術』に頼らざるを得ません」

 市の人口は現在約2万7000人。将来推計では2040年に1万6000人まで減少。高齢化も進行し、65歳以上の老年人口の割合は40年には46%まで拡大する見通しだ。「近未来技術は市が抱える課題解決につなげたい。今のうちから、技術を活用できる下地を作っておくことを狙っています」と小田野直光地方創生・総合戦略統括監は語る。

 高齢化と人口減が進めば、社会的な共同生活の維持が難しい限界集落が増える。働き手が減り、物品の輸送手段を確保できなくなることも懸念される。だが、ドローンがあれば、限界集落などへの物品の輸送も容易になり、無人運転バスが実用化されれば、人件費をかけず低コストで公共交通網を確保できる。人口減が進む地方にとって近未来技術は欠かせないインフラなのだ。

 新たな産業、人材の呼び水に

 市が近未来技術にこだわるのにはもう一つの理由がある。人材の流入だ。「近未来技術の担い手となる人材や企業が集まり、生活や事業の拠点を置くようになれば、人口減や高齢化を解消し、活気ある街づくりつながる」と門脇市長は期待する。

 利用する人材や企業が集まってこそ特区は効果を発揮する。だが、特区を活用しようという動きはまだ大きくはない。市の予算も限られ、思い切った手を打てないのも実情だ。その中で、少しずつだが、民間の側から特区活用の動きも表れてきた。

 東京に拠点を持つ、コンテンツ企画・設計会社「コンテンツ計画」の有坂民夫代表取締役、コンサルティング会社「ツクル」の三宅創太代表、地域支援プロジェクトを展開する「創生する未来」の伊嶋謙二代表理事が立ち上げた任意団体「SFPパートナーズ」の取り組みだ。

 今年4月には、JR田沢湖駅前に「TAZAWAKOベース」という施設を開設。会議や講座などを行うスペースのほか、シェアオフィスとして利用できる部屋もある。特区をベースに起業や事業参入を目指す企業の交流や、起業を考えている地元市民らの活動の支援を目指している。

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