ビジネスカラオケで差をつけろ 「先輩、すげえ」と言われる盛り上げ方

 
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常見陽平のビバ!中年

 小生、43歳。妻一人、娘一人。大学教員をしつつ、評論活動をしている。以前は15年間、サラリーマンをしていた。

 「いい年こいて」と呼ばれそうだが、未だに夏フェスに通っている。ほぼ毎年SUMMER SONIC(通称:サマソニ)に通っている。マリンスタジアム、幕張メッセなど、海浜幕張あたりが会場なので、アクセスも悪くない。国内外のオールジャンルのアーティストが参加するので何かと楽しい。朝からビールを飲みつつ音楽を聴くのは至福のひとときだ。

 娘が生まれたばかりではあるが、家族の了解を得て今年も参加した。私が行った日は、カルヴィン・ハリス、ブラック・アイド・ピーズなどの大御所が出演した。他にも東京スカパラダイスオーケストラや、佐野元春など我ら中年にもおなじみのアーティストが多数参加していた。

 しかし、私が一番楽しめてしまったのは…。TRFだった。この時点で夏フェス男としてはどうかと思うのだが、楽しいのだから仕方がない。実際、この日見たアーティストの中で一番盛り上がっていた。トリのカルヴィン・ハリスを凌ぐレベルだった。1曲目がいきなり「Overnight Sensation ~時代はあなたに委ねてる~」だ。この時点で会場はもうフルボルテージである。その後も「Where to begin」「寒い夜だから…」「BOY MEETS GIRL」「CRAZY GONNA CRAZY」と畳み掛け、ラスト2曲の「EZ DO DANCE」「survival dAnce ~no no cry more~」はまさに狂喜乱舞の状態で会場がサビと振り付けで大盛り上がりだった。メンバー全員が当時とまったく変わらないルックスで(遠くから見る分には)、色褪せない青春の日々が蘇ったのだった。

 仕事や家事から離れて非日常を味わう場であるのだが、何かを思い出してしまった。これって、サラリーマン時代のカラオケじゃないか、と。顧客・取引先や職場の仲間と想いを共有する「ビジネスカラオケ」を思い出してしまった。

面倒を乗り越えたところにあるビジネスカラオケの面白さ

 「ビジネスカラオケ」の定義は、まだ明確ではない。基本、顧客・取引先との接待、職場での上司・同僚・部下との懇親会など、ビジネス上のカラオケのことを指す、ということにしよう。一緒にビジネスをするために交流を深め、想いを共有する場である。

 よくビジネスカラオケは流儀があって面倒くさいと言われる。たしかに、取引先や上司の十八番(おはこ)を歌ってはいけない、みんなが知っている曲や盛り上がる曲を歌う、全体の流れを考える、上司や取引先が歌っている時はタンバリンを乱打する、飲み物の注文は早め早めに例の電話で入れる、割り勘の場合は傾斜配分の計算を「勘定奉行」的な人がスマートに済ませるなど、面倒臭いしきたりもある。しかし、これを乗り越えたところにビジネスカラオケの面白さがあるのだ。

 そして、ここでこそ中年男は20代、30代に「先輩、すげえ」と言われるようなノウハウを披露するべきなのである。中年男が、ビジネスカラオケを盛り上げるためのノウハウをここでお伝えしよう。

「先輩、すげえ」と言われる中年男の盛り上げ方

1.ビジネスとリンクさせたMCを

 カラオケとは、我々庶民がスターになれる瞬間である。ライブではMCというものがある。いわゆるお喋りだ。ライブにかける想いもあれば、ファンにはたまらないこぼれ話もあるのだが、盛り上がるのは曲の前の呼びかけだ。この日のTRFも例えば、「寒い夜だから…」を歌う前にはボーカルのYU-KIが「暑い夏だけど歌うよー」などと前口上で盛り上げた。

 ビジネスカラオケでも、曲に入る前の前口上で盛り上げたい。例えば、郷ひろみの「2億4000万の瞳」は営業マンにとって便利だ。イントロや間奏で「2億4000万どころか、俺は10億売るぞー!」などと絶叫すると盛り上がること、間違いなしだ。実際、サラリーマン時代はこの曲に合わせて○億売ると宣言して実際、そのように達成した人がいた。

 曲とリンクしたMCで差をつけよう。どの曲ならハマるかを考えてみよう。

2.替え歌で盛り上げろ

 替え歌も鉄板の盛り上げネタだ。特にウケるのは、歌詞に社名、商品名、案件名などを入れることだ。

 ビール会社出身者に直接聞いた話だが、社内の宴会では必ず「巨人の星」の替え歌が歌われるという。歌詞に競合の社名を上手く入れ込むのだ。想いが込められて盛り上がるのである。

3.身体を張った芸もあり

 カラオケボックスは、密室である。普通の居酒屋では出来ないような芸も可能だ(お店に怒られては駄目だが)。

 会社員時代に衝撃を受けたのは、事業部次長クラスの方が沢田研二の「ストリッパー」に合わせて脱ぎ始めたことだった。大事な部分は隠していたが。光GENJIの「スターライト」のサビに合わせて、丸い椅子を数個おいてローリングをする人もいた。その人は、のちに社長になった。

 最近では、カラオケボックスのディスプレイにPCをつないでプレゼンをする人もいるようだ。ややスレスレだが、認めている店もある。パワーポイントなどで盛り上げるのも手ではある。

 身体を張ることによって、真剣度をアピールするのもありだ。ただし、お店への迷惑、コンプライアンスには注意しよう。

4.みんなで歌い、踊れる曲は必ず入れる

 世代を超えて、誰もが知っていて歌い踊れる曲は必ず入れる。一体感を高めるのに効果的だ。

 この点においては、「国民的ロックバンド」と言われるサザンオールスターズなどは便利である。「みんなのうた」などはぴったりだ。それこそ、前出のTRFも鉄板である。アニソンなども便利である。

 一体感をどこで作り出すかを考えるのだ。これぞ、一人カラオケや仲間カラオケとの違いである。

5.締めの流れを考えろ

 ビジネスカラオケの成否は、締めまでの数曲にかかっている。ここで盛り上げ、一体感を高めた上で大爆発する。この流れの設計が全てだと言っていい。

 よく使われる曲はサイモン&ガーファンクルの「明日にかける橋」である。この曲をマイクを回して歌ったあとで、「私たち2社で力をあわせながら、明日にかける橋をつくりましょう」などと言うと完璧である。

 「We Are The World」なども便利だ。「私たちで新しい世界をつくるのです」アピールなどに使える。歓送迎会などでは、歌詞に合わせて「私たちは○○チルドレンですよ」などと言うとばっちりである。

 絶対に避けたいのは、終了10分前の「終わりですよ、延長しますか」電話がきてバタバタすることである。残り時間も計算した上で、曲を入れていくのだ。

 ここまで読んで「そんなもの当然やっているよ」という方もいることだろう。そう、これは、我々中年が長年において培ってきたもの、まるで空気のように当たり前なことなのだ。これらのノウハウを伝承していくことに、私たちの存在意義はあるのだ。

 我々中年男は、ビジネスカラオケ道を次の世代に伝承するのだ。時代はあなたに委ねてるのだ。

【プロフィル】常見陽平(つねみ・ようへい)

千葉商科大学国際教養学部専任講師
働き方評論家 いしかわUIターン応援団長
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。主な著書に『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など。

常見陽平のビバ!中年】は働き方評論家の常見陽平さんが「中年男性の働き方」をテーマに執筆した連載コラムです。更新は隔週月曜日。