法政大教授・水野氏「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」

著者は語る

 □法政大学教授・水野和夫氏

 ■日本のポスト近代化 英知学ぶ一助に

 グローバリゼーションとは、ヒト・モノ・カネの国境を越える移動のこと。中心に富(資本)を収集することで、社会秩序を維持してきたのが西欧文明です。周辺国から富の収奪を続け、常に膨張し続けてきた経緯が、歴史には刻まれています。

 例えば、16世紀のスペイン帝国による陸の帝国(中世封建システム)からオランダや英国による海の帝国(近代世界システム)への大転換、19世紀の動力革命(鉄道と運河の時代)、20世紀のIT革命など。資本主義は「より速く、より遠くへ、より合理的に」を目指して、成長し続けました。しかし20世紀後半、テロリズムの激化(政治不安)、ゼロ金利という危機を迎えると、米国は自国第一主義を前面に打ち出し、英国は欧州連合(EU)を離脱しました。グローバリズムの旗振り役だった英米両国が、共に世界に対して「閉じる」選択をしたのです。この資本主義の終焉(しゅうえん)という危機を乗り越えるために、どんなシステムが必要なのか。中世・近代の経済史を参照しながら、現在の世界情勢を把握し、そこから日本の進むべき方向を探るのが本書の狙いです。

 米国は「電子・金融空間」(全ての富はウォール街へ)で近代システムの延命を図りながらもうまくいきませんでした。一方、EUは加盟国の主権を制限し経済圏を閉じることで危機に対応しました。こうした試みに沿い日本のポスト近代化を考えると、マイナス金利が続き少子高齢化で経済成長を続ける必要のない日本は、近代システムと順次手を切り「よりゆっくり、より近くに、より寛容に」の牽引(けんいん)役になればよい。トランプ政権と距離を置き、EUとの連帯を深める。やるべき施策は、財政の立て直し(国債を増やさない)、再生可能エネエルギーの開発(化石燃料に頼らない)、地方分権(閉じた空間)の3点。近代システムの晩秋を生きる私たちにとって、かじ取りの選択権は大事です。本書が歴史の英知を学ぶ一助になれば幸いです。(842円 集英社新書)

【プロフィル】水野和夫

 みずの・かずお 1953年愛知県生まれ。法政大学法学部教授。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)などを歴任。著書に『資本主義の終焉(しゅうえん)と歴史の危機』ほか多数。