『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』『ユダヤ 知的創造のルーツ』『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』

ビジネスパーソンの必読書
『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』中本千晶著(ポプラ新書・800円+税)

 異なるジャンルの2冊の本に思わぬ共通点が見つかることがある。最近は量子力学と仏教哲学に共通の視点があるのを知った。読書の秋だからこそ、あまりなじみのない分野の本にも手を伸ばしてみてはどうだろうか。

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 ■10年満席の秘密 『鉄道会社がつくった「タカラヅカ」という奇跡』中本千晶著(ポプラ新書・800円+税)

 100年を超える歴史がある宝塚歌劇。独身女性のみで演じるミュージカル風の独自の舞台芸術は世界に類を見ない。

 宝塚歌劇団はスタート当初から一貫して阪急電鉄が運営に当たっている。鉄道会社らしく、ほぼ毎日休みなく、宝塚市と東京にある自前の劇場で公演を続けているというから驚きだ。しかも1カ月ごとに新作を上演。この10年ほど客席稼働率は約10割をキープしている。本書は、宝塚歌劇の歴史をひもとくとともに、衰えを知らないその人気の秘密に迫っている。

 さまざまな「二面性」がある。虚飾のイメージを保ちながら、生オケを使って本格的な海外ミュージカルも演じる。トップスターを選抜する「スターシステム」と平等に育成する「学校システム」の共存などだ。

 これらの二面性が独特の魅力を醸し出し、また幅広いファン層を獲得するのに貢献しているのは間違いない。

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 ■成功は戒律から!? 『ユダヤ 知的創造のルーツ』石角完爾著(大和書房・1600円+税)

 ユダヤ人に経済的成功者が多いことはよく知られている。世界に名だたるグローバル企業の創業者がこぞってユダヤ人なのはなぜなのか。

 ユダヤ教に改宗した日本人弁護士による本書は、ユダヤ人が厳密に守るべきだとされている戒律の中身を紹介。そこに「成功の源泉」を探っている。

 戒律の厳守は、不自由さを受け入れることでもある。たとえば食事戒律。ユダヤ教は、好きなものをたらふく食べるのを禁じている。これは「食べること」だけが人生の目的ではないことを教えるためだ。

 安息日を守るのも重要な戒律だ。毎週金曜日の日没から土曜日の日没までは、一切の仕事をしてはならない。この制限は、日本人が想像するより、はるかに厳密に守られているそうだ。

 週1日の安息日があることで、ストレスが解消され、柔軟な発想力や想像力が培われる。大脳生理学でも実証されている効果なのだという。

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 ■受け売りはNG 『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』山口謠司著(ワニブックス・1400円+税)

 考えたことや思いついたアイデアが「どうもうまく人に伝わらない」と、もどかしく感じる経験は誰にでもあるはず。本書は、自分の考えをしっかり伝えるための心構えや準備、具体的な手法を指南する。書誌学・音韻学・文献学を専門とする大学教授が、中国や日本の古典をもとにユニークな解説を施している。

 著者が強調するのは、儒教の教えである「中庸」だ。常に真ん中であること、極端な二者択一を避けるというのが中庸の意味。プレゼンなどの際にも中庸を意識すれば、力みすぎず、淡々としすぎることもなく、素直に言葉が出てくるはずだという。

 また、荀子の「口耳之学」という言葉も紹介。これは、耳から聞いたことをそのまま口に出す「受け売り」を戒めたものだ。著者は、口耳之学にならぬよう、言いたいことを6~7割にそぎ落として伝えるべきだとしている。

 ついついやってしまう極論や受け売り。気をつけたい。